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摺硝子
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すりがらす
其所にも
摺硝子の
嵌まつた
腰障子が二
枚閉ててあつた。
中では
器物を
取り
扱ふ
音がした。
宗助は
戸を
開けて、
瓦斯七輪を
置いた
板の
間に
蹲踞んでゐる
下女に
挨拶をした。
家の
内は
寧ろ
靜か
過ぎる
位しんとしてゐた。
摺硝子の
戸が
閉てゝある
玄關へ
來て、ベルを二三
度押して
見たが、ベルが
利かないと
見えて
誰も
出て
來なかつた。
宗助は
仕方なしに
勝手口へ
廻つた。
わざと
遠慮して
勝手口へ
回ると、
摺硝子へ
明るい
灯が
映つて、
中はざわ/\してゐた。
上り
框に
帳面を
持つて
腰を
掛けた
掛取らしい
小僧が、
立つて
宗助に
挨拶をした。
茶の
間には
主人も
細君もゐた。