把握はあく)” の例文
この黄色い人種は、いったいどんな口を利くだろう?——こういう興味がさっきから、好学の老博士を、しっかり把握はあくしていたのだ。
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
ゆえに、ほんとうに、自ら仏教を学び、しかも行ずるものにして、はじめて仏教の真面目を認識し把握はあくすることができるのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
不完全な人間は一気にその普遍不易の道徳の根元を把握はあくしがたい為めに、模索の結果として誤ってその一部を彼等の規準とするに過ぎぬ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
三国間の戦いは、ただその屍山血河しざんけつがの天地ばかりでなく、今は外交の駈引きや人心の把握はあくにも、虚々実々の智が火華を散らし始めてきた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
注釈者たちはこの点に関して、『ある事柄の正しい把握はあくと同じ事柄の間違った解釈とは互いに完全に排除し合うものではない』
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
数学だけは理解しても、少なくもアインシュタインの把握はあくしているごとくこの原理を「つかむ」事は必ずしも可能でない。
相対性原理側面観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
事物の固有法則をよく把握はあくし、その価値を最大限に発揮させながら、しかもそれを国家目的に適合させるということが、正に政治の要諦ようていなのである。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
意味としての「いき」の把握はあくは、後者を前者の上に基礎附け、同時に全体の構造を会得する可能性にかかっている。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
私はその主題の大きさと真理をするどく把握はあくしていることに昂奮こうふんし、精神の力づよい高揚をたのしんでいた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
気魄きはくと想念はひとかどのものがあったにしても、弦楽器の性格を把握はあくして、自由に扱い兼ねたのがシューマンの欠点で、これはいたしかたのないことである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
瑠璃子の心が火のように烈しく、石のように堅くても、羅衣うすものにも堪えないような、その優しい肉体は、荘田の強い把握はあくのために、押しつぶされてしまいはせぬか。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
けれども、兄妹みんなで、即興の詩など、競作する場合には、いつでも一ばんである。できている。俗物だけに、わば情熱の客観的把握はあくが、はっきりしている。
愛と美について (新字新仮名) / 太宰治(著)
縁あれば道伴れとなり縁なければ別れて一人となる機会のあやつるままに任せ、自分だけは切れそうになる思惟の糸を継ぎ継ぎ一向きにかの神秘の把握はあくに探り入った。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
彼の把握はあく力は、気分の世界を通じて本質にまでせまってゆく。われわれはジャン・クリストフの性格を見せらるるのみではなく、その心臓の鼓動をじかに聞かせらるる。
疾病しっぺい、埋葬、苦々にがにがしい論争、困窮、世に認められない天才、——そしてことに、その音楽、その信仰、解放と光明、垣間かいま見られ予感され欲求され把握はあくされた喜悦、——神
信仰のむくいとして来世における永遠の生命を把握はあくしようとするならば、今後すみやかに悔い改めて神に帰依きえし、努めて悪をなさず、善をおこなおうと心がけなければならない。
私にとっていちばん自信のないことは、この赤ん坊が自分の生命と、もっともふかい関係をたもっていなければならない筈であるのに、それをしっかりと把握はあくすることのできないことだけである。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
大人が子供より怜悧れいりであるというのは、人間的に堕落したものだ。私たちが童話に於いて子供の精神を把握はあくして、もう一度死んだ大人の頭から霊魂を呼びかえさんとする真意は、即ちこれに外ならぬ。
童話に対する所見 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし物理学の基礎的知識の正当な把握はあくは少しの努力によって何人なんぴとにでもできることであるから、それを手にした上で篤志の熱心なる研究者が
物理学圏外の物理的現象 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
たなごころに無限を把握はあくしうる人です。しかも、この今日に生きる人こそ、真に過去に生き得た人です。未来にも生き得る人です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
いずれが、将来を把握はあくするほんものか。——えないのである。混沌こんとんたる動揺をなすばかりで、方向を決し得ないのだ。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
政治では、何が基本目的で何がそのための政策的手段かの、本末ほんまつがはっきりと把握はあくされることがたいせつである。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
私はその主題の大きさと真理をするどく把握はあくしていることに昂奮こうふんし、精神の力づよい高揚をたのしんでいた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
元来、曲線は視線の運動に合致しているため、把握はあくが軽易で、眼に快感を与えるものとされている。またこの理由に基づいて、波状線の絶対美を説く者もある。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
最も確実に把握はあく出来るのではあるまいかという、おぼろげな見当をつけて、自分の生涯の方針も、独逸に留学する事に依って解決されるのかも知れないと考えた。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
慧眼けいがんなブラームスは、審査作品中に交ったドヴォルシャークの作品を見て、その中に盛られたボヘミア音楽の特性と、その特性を把握はあくした叡智えいちと詩情を見抜いて一等に推し
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
が、強い把握はあくは、容易に解けそうもなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
これらは発声映画と無声映画との特長をそれぞれ充分に把握はあくした上で、巧みに臨機にそれを調合配剤しているものと判断されることはたしかである。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
このほうの人々は、勿論、史実や遺墨を辿たどって、かなり真実に近いはずの古人を把握はあくしていて、武蔵への景慕は、研究というよりはむしろ信仰的でさえある。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美しい言葉やイデオロギーの陰にある実体を把握はあくし、客観的な真実の認識に努力するのが学問である。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
芸術は畢竟ひっきょう作者その人である。個性なくして芸術はあり得ず、創作者その人を知らずして作品の真髄を把握はあくすることは甚だむつかしい。本書を青年子弟のために書いた所以ゆえんである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
私どもは、どこまでも、真理への道を辿たどる、敬虔けいけんな求道者でなくてはなりません。しかも、真面目まじめに、真理を思慕し、探究するものによってのみ、真理ははじめて把握はあくし得られるのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
したがって、縦縞にあっては二線の乖離的かいりてき対立が明晰めいせきに意識され、横縞にあっては一線の継起的けいきてき連続が判明に意識されるのである。すなわち縦縞の方が二元性の把握はあくに適合した性質をもっている。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
私は、人の世の諸現象の把握はあくについては、ヘエゲル先生を支持する。
創作余談 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それに対応すべき人間の心理的現象の確実な把握はあくとは、要するにこれら映画の作者がすぐれた芸術家であるという平板な事実を証明するものである。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
夫人の寧子ねねは、これは、どこの女房とも、同じように、絶対的な位置と、発言権とをもって、良人おっとの心を把握はあくしていたし、同時に、良人から把握されてもいた夫婦仲であるから
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明白な陳套ちんとうな語で言い現わされるような感情の動揺を感じることはないであろうが、真なるものを把握はあくすることの喜びには、別に変わりはないであろう。
科学と文学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
把握はあくすることができないのであります
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その統計的特徴を把握はあくすることができるであろうと想像するのは、必ずしも不倫ではあるまいと思われる。
物理学圏外の物理的現象 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そのかわりに、あるいはそれだから、写真は事象の全体を系統的に把握はあくする能力をもっていない。
ニュース映画と新聞記事 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
実際そういうまずいほうの実例はいくらでもある。それをそうさせない微妙な呼吸はただこの際における「固有な自然のリズム」の正確の把握はあくによってのみ得られるのである。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
さすればその焦点に集中した要素をやや確かに把握はあくし得らるるから、今度は逆の順序によってこの焦点から発散し拡散した要素の各時代における空間的分布を験する事ができる
しかしすべての人間は、皆無意識に物理的力学的に世界像を把握はあくする事を知っている。
映画の世界像 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
夢幻的な間に合わせの仮象を放逐して永遠な実在の中核を把握はあくしたと思われる事でなければならない。複雑な因果の網目をわくに張って掌上に指摘しうるものとした事でなければならない。
春六題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
器物の美にはもちろんそれ自身に内在する美があるには相違ないが、それを充分に発揮させるためにはその器物の用と相関連したモンタージュの把握はあくが必要ではないかと考えるのである。
青磁のモンタージュ (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しっかり把握はあくするまでにはなかなか長い時を待たなければならないのである。
量的と質的と統計的と (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それで、今もしここに一人のすぐれた超人間があって、それらの方程式の全体を把握はあくし、そうしていろいろな可能な境界条件、当初条件等を插入そうにゅうして、その解を求めることができたとする。
科学と文学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ただわれわれがまだその方則を把握はあくし記載し説明し得ないだけである。
日常身辺の物理的諸問題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
多くの人は一見乾燥なように見える抽象的系統の中に花鳥風月の美しさとは、少し種類のちがった、もう少し歯ごたえのある美しさを、把握はあくしないまでも少なくも瞥見べっけんする事ができるだろうと思う。
相対性原理側面観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そういう種類のものにはやはり必ず何かしら独創的な内察があり暗示があり、新しい見地と把握はあくのしかたがあり、要するになんらかの「生産能」を包有しているある物がなければならないのである。
科学と文学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)