打掛うちかけ)” の例文
その身には大名の奥方の着るような打掛うちかけを着て、裾を長く引いておりました。その打掛は、縮緬ちりめんに桐に唐草からくさぬいのある見事なものでありました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
左仲が煙管きせるもと差出さしいだすにぞ左仲は愕然ぎよつとなし思はずふるへ出せし體を見るより彼の者は莞爾につこと笑ひ左仲が側へ同じくこし打掛うちかけ旅人りよじんは何等のようにてかく夜道を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかるにミヤズ姫の打掛うちかけの裾に月の物がついておりました。それを御覽になつてお詠み遊ばされた歌は
間着あいぎは紅梅地に百花を色とりどりに染めたものだし、打掛うちかけ綸子りんずらしい白地に唐扇と菊花ぢらしで、金糸の縫がある帯は桔梗ききょう色の地に唐草と蝶、これにも金糸の縫が入っていた。
竹柏記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
はては片足進みて片足戻る程のおかしさ、自分ながら訳も分らず、名物くり強飯こわめしうるいえ牀几しょうぎに腰打掛うちかけてまず/\と案じ始めけるが、箒木ははきぎは山の中にも胸の中にも、有無分明うむぶんみょうに定まらず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いつぞやのように打掛うちかけこそ着ていないけれども、寝衣姿ねまきすがたのままで、手には妻紫つまむらさき扇子せんすを携えて、それで拍子を取って何か小音に口ずさんで歩いて行くと
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いとはずたどり行に漸々と紀州加田浦かだのうらいたる頃は夜はほの/″\と明掛あけかゝりたり寶澤は一休ひとやすみせんと傍の石にこし打掛うちかけ暫く休みながらむかうを見れば白きいぬぴき臥居ふしゐたり寶澤は近付ちかづき彼の握飯にぎりめし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あなたのている打掛うちかけの裾に
一通りの話をした御雪太夫の面影おもかげを思い返して、道中で見た時とは違い物々しい飾りを取りはずし、広くて赤いえりのかかった打掛うちかけに、華美はでやかな襦袢じゅばんや、黒い胴ぬきや
してうしてどうさかなを出し呉よと云ながら縁臺えんだいにどつかとこし打掛うちかけやれ/\日のみじかひ事だ十月の中の十日に心なしの者をつかふなとはよくいひしものだコレ/\若い者大急ぎだ早く酒と肴を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かすみにさした十二本のかんざし、松に雪輪ゆきわ刺繍ぬいとりの帯を前に結び下げて、花吹雪はなふぶきの模様ある打掛うちかけ、黒く塗ったる高下駄たかげた緋天鵞絨ひびろうど鼻緒はなおすげたるを穿いて、目のさめるばかりの太夫が、引舟ひきふねを一人、禿かむろを一人
「ああ、打掛うちかけを着たお姫様が向うを向いている、ありゃ何だ」