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憫笑
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びんしょう
ふりがな文庫
“
憫笑
(
びんしょう
)” の例文
実に彼等は、気の短かい性急の人たちである。だがしかし一方では、こうした性急の詩人たちが、客観主義者によって
憫笑
(
びんしょう
)
されてる。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
その眼をもってこれら一連の猿飛小説をみるに、その小市民的みみっちさとけち臭き合理主義とに
憫笑
(
びんしょう
)
を禁じ得ないのである。
艶妖記:忍術千一夜 第一話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「いただきます。」女は、私の
野暮
(
やぼ
)
を
憫笑
(
びんしょう
)
するように、くすと笑って馬鹿
叮嚀
(
ていねい
)
にお辞儀をした。けれども箸は、とらなかった。
佐渡
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
と
西行
(
さいぎょう
)
がいっているようにその女どもは今は
弥陀
(
みだ
)
の国に生れていつの世にも変らぬものは人間のあさましさであることを
憫笑
(
びんしょう
)
しているのであろうか。
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
チベット人は立派であるというて驚いて居りましたが、確かに我々の眼から見れば実に卑しむべき飾りであると思うて
憫笑
(
びんしょう
)
せざるを得なかったです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
▼ もっと見る
彼女は、信一郎の顔を、じっと見詰めていたが、
憫笑
(
びんしょう
)
するような笑いを、頬の辺に浮べると、一寸腰を浮かして、傍の卓の上の呼鈴を押しながら云った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
鏡の前に戻りながら、伸子は、いつの間にかこういう風に働くようになった自分の感情を省みて、
憫笑
(
びんしょう
)
した。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そして、飯粒で、その紙看板を紋つきの背に貼りつけて、往き来の人の驚愕と、
憫笑
(
びんしょう
)
に見迎え、見送られながら、こうしてこの神奈川まで来かかったところだった。
口笛を吹く武士
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
彼は屋根の棟に腰かけて、ほかほかと暖かい日光を浴びながら、健康に育った子供の時分のことを想いだして、不甲斐なくなった自分の神経をわれと
憫笑
(
びんしょう
)
していた。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
そして私を
憫笑
(
びんしょう
)
して、あれほど昂然と自己の所信を固執していたアレサンドロも、ついに死の直前に至って死を恐怖するのあまり、なんとかして自己の罪の軽減をはかるべく
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
まして、復讐の事の成った今になって見れば、彼等に与う可きものは、ただ
憫笑
(
びんしょう
)
が残っているだけである。それを世間は、殺しても猶飽き足らないように、思っているらしい。
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼等が我々を憐れみ笑う立場と、我々が生活しつつある立場には、根柢的に相違がある。我々の生活が正当な要求にもとづく限りは、彼等の
憫笑
(
びんしょう
)
が甚だ浅薄でしかないのである。
日本文化私観
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
用心深い策略の
煩瑣
(
はんさ
)
な規則を見ると、
憫笑
(
びんしょう
)
に価するようなものばかりであった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
遊びではないように高飛車に出た少年のその無智無思慮を自省せぬ点を
憫笑
(
びんしょう
)
せざるを得ぬ心が起ると、殆どまた同時に引続いてこの少年をして
是
(
かく
)
の如き語を
突嗟
(
とっさ
)
に発するに至らしめたのは
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
家禄知行蔵米合わせて四十一石、というところに神尾が
憫笑
(
びんしょう
)
を浮べました。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
口を
噤
(
つぐ
)
んだまま正面から私を見返した彼の顔付は——その
面皰
(
にきび
)
のあとだらけな、例によって眼のほそい、
鼻翼
(
びよく
)
の張った、脣の厚い彼の顔は、私の、繊細な美を解しないことに対する
憫笑
(
びんしょう
)
や、又
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
と、半兵衛は自己の
痩躯
(
そうく
)
をかえりみながら、自ら
憫笑
(
びんしょう
)
を与えていった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「マア、とんでもない誤算ですわ」と鎮子は
憫笑
(
びんしょう
)
を湛えて
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
X大使は、
憫笑
(
びんしょう
)
すると、やっと手を放した。
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と
大
(
おおい
)
に泥棒の無謀を
憫笑
(
びんしょう
)
したがまた一人を
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
人は、私の
守銭奴
(
しゅせんど
)
ぶりに、
呆
(
あき
)
れて、
憫笑
(
びんしょう
)
をもらしているかも知れないけれど、私は、ちっとも恥じていない。私は、無理をしたくないのだ。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
当時の女らしさの掟への
憫笑
(
びんしょう
)
を意味していることで十分に理解されると思う。
新しい船出:女らしさの昨日、今日、明日
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
若しや、あれを読んだ痴川が忽ち伊豆の内幕を見すかしたような
憫笑
(
びんしょう
)
を
刻
(
きざ
)
み例の毒々しい物腰で苦もなく
黙殺
(
もくさつ
)
し去った場合を想像するに、体内に激烈な
顛倒
(
てんとう
)
を感じるような
苛立
(
いらだ
)
ちを覚えた。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
坂本竜馬は、転がり落ちて行くよたとんの姿を、
憫笑
(
びんしょう
)
しながら言いました
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
打見
(
うちみ
)
には子供らしい美和子だったが、その笑い方と云い、言葉と云い、涙ぐんで、ゴタゴタ云っている美沢や姉を
憫笑
(
びんしょう
)
し、しらじらしく眺めているというような、底知れない大胆さが含まれていた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
と、要助は
憫笑
(
びんしょう
)
するように
脚
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「おまえがか?」王は、
憫笑
(
びんしょう
)
した。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」
走れメロス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
天井を向いて
憫笑
(
びんしょう
)
しようとしたら堪らなく成って泣き出した。
日記:07 一九二一年(大正十年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
あなたに出来る精一ぱいの反抗は、たったそれだけなのですか、鳩売りの腰掛けを
蹴散
(
けち
)
らすだけのことなのですか、と私は
憫笑
(
びんしょう
)
しておたずねしてみたいとさえ思いました。
駈込み訴え
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
読むとしても、主人公の醜態を行っている描写の箇所だけを、
憫笑
(
びんしょう
)
を
以
(
もっ
)
て拾い上げて、大いに呆れて人に語り、郷里の恥として罵倒、嘲笑しているくらいのところであろう。
善蔵を思う
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
僕のあわれな自惚れを、キントトにも、越後獅子にも、みんなに見破られて
憫笑
(
びんしょう
)
せられているような気がして、さすがの新しい男も、この時ばかりは閉口した。実に、わかった。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「酒を飲む人の話は、信用出来ませんからね。」と言って、頬に
幽
(
かす
)
かな
憫笑
(
びんしょう
)
を浮かべた。
乞食学生
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ばかばかしいと
顰蹙
(
ひんしゅく
)
せられて、私自身も何だか大損をしたような気さえしたのであるが、このたびの先生の花吹雪格闘事件もまた、世の賢者たちに
或
(
ある
)
いは
憫笑
(
びんしょう
)
せられるかも知れない。
花吹雪
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
爽
(
さわ
)
やかに安心して、こんな醜い吹出物だらけのからだになっても、やっぱり何かと色気の多いおばあちゃん、と余裕を持って自身を
憫笑
(
びんしょう
)
したい気持も起り、再び本を読みつつけました。
皮膚と心
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
フィクションを、この国には、いっそうその傾向が強いのではないかと思われるのであるが、どこの国の人でも、昔から、それを作者の醜聞として信じ込み、上品ぶって非難、
憫笑
(
びんしょう
)
する悪癖がある。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
“憫笑”の意味
《名詞》
憫笑(びんしょう)
憐れんで笑うこと。「憫」は「あわれむ」の意。
(出典:Wiktionary)
憫
漢検1級
部首:⼼
15画
笑
常用漢字
小4
部首:⽵
10画
“憫”で始まる語句
憫
憫然
憫殺
憫察
憫憐