惰性だせい)” の例文
ぞくに「ふみきり」といふペタルで、つまり通の自轉車のやうに、或る程度の惰性だせいがついたらペタルの上で足を休ませてゆくといふことが出來ない。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
なんとなれば、これ材料ざいりよう家屋各部かおくかくぶ結束けつそく無能力むのうりよくなるがうへに、地震ぢしんのとき、自分じぶん惰性だせいもつ家屋かおく地面ぢめん一緒いつしようごくことに反對はんたいするからである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
名称はその初期の目的さえ達してしまえば、後はただ惰性だせいをもって我々がこれを保持するに過ぎなかったのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
すべて勝負ごとは何に限らず悪い惰性だせいを伴って本業を怠らせるから要するに皆つぶらかしに帰着する
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ついとこのうちで愚圖々々ぐづ/\してゐるうちに、時間じかん遠慮ゑんりよなくぎて、えゝ面倒めんだうだ、今日けふめにして、そのかは今度こんだ日曜にちえうかうとおもなほすのが、ほとんど惰性だせいやうになつてゐる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
大衆は一般に受動的、消極的、怠惰たいだ的、惰性だせい的な性質を持つもので、通常は生計をはかることで精力を費やし、一定の財産を持って安定した生活ができれば、だいたいはそれで満足している。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
「それや、無理もない。惰性だせいというもの、そこに、転機が来なければの」
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文字の威力よりも、習慣の惰性だせいが怖ろしいということになります
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小六ころくちゝんで、すぐと叔父をぢられて以來いらい學校がくかうへもけるし、着物きもの自然ひとりで出來できるし、小遣こづかひ適宜てきぎもらへるので、ちゝ存生中ぞんしやうちゆうおなやうに、何不足なにふそくなくらせて惰性だせいから、其日そのひ其晩そのばんまで
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)