惣身そうしん)” の例文
胃についてい得べき事は、惣身そうしんについても道い得べき事である。惣身について道い得べき事は、精神についてもい得べき事である。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
日向国飫肥おび領の山中にて、近き年菟道弓うじゆみにて怪しきものを取りたり。惣身そうしん女の形にして色ことのほか白く黒髪長くして赤裸なり。人に似て人にあらず。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
年頃としごろ廿一二の女惣身そうしん打疵うちきずおほくしてころし候樣子に相見申候尤も衣類いるゐ紬縞小袖つむぎじまこそで二枚を着し黒純子くろどんすりう模樣もやう織出おりだしの丸おびしめ面部めんぶまゆひだりの方にふるきずあと相見あひみえ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と熊の惣身そうしんに抱付きました。此のていを見るより猟人かりゅうどは益々大音だいおん
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼は其所そこ疱瘡ほうそうをした。大きくなって聞くと、種痘が元で、本疱瘡ほんほうそうを誘い出したのだとかいう話であった。彼は暗い櫺子のうちでころげ廻った。惣身そうしんの肉を所嫌わずむしって泣き叫んだ。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たゝれてあれば惣身そうしん痩衰やせおとろへ眼はくぼみ小鼻も落て此世の人とも見えざるゆゑ兩人の用人はなみだを流し是が嘉川家の若殿樣の有樣なるか扨々淺ましき御事なり少しも早く御連退つれのき申さんと兩人して組牢くみらうはしら
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
能々よく/\うんかなひし事かなされど二日二夜海上にたゞよひし事なれば身心しんしんつか流石さすがの吉兵衞岩の上にたふふし歎息たんそくの外は無りしが衣類いるゐは殘らずしほぬれ惣身そうしんよりはしづくしたゝり未だ初春しよしゆんの事なれば餘寒よかんは五體に染渡しみわたはりにてさゝれる如くなるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)