悪夢あくむ)” の例文
旧字:惡夢
まるで、悪夢あくむからめたよう……ふとみると春のはさんさんと木の間からもれて若草にもえ、鳥はほがらかにってうたっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうかんずると、地主じぬしは、きゅう悪夢あくむからさめたようながしたのでした。同時どうじに、まえへ、きよらかで、たいらかなひととしてむべきみちひらけるのをかんじました。
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)
悪夢あくむのように過ぎたここ五年間は、大石先生をも人なみのいたでと苦痛のすえに、小さな息子にいたわられながら、このへんぴな村へ赴任ふにんしてこなければならぬ境遇きょうぐうに追いこんでいた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
(それにしても、さっき見たのは、あれは夢だったかしら。悪夢あくむ! 悪夢!)
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いつか顔をもたげた相手は、細々と冷たい眼をきながら、眼鏡めがね越しに彼女を見つめている、——それがなおさらお蓮には、すべてが一場の悪夢あくむのような、気味の悪い心地を起させるのだった。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それは丁度ちょうど悪夢あくむおそわれているようなかんじで、その無気味ぶきみさともうしたら、まったくおはなししになりませぬ。そしてよくよくつめると、そのうごいてるものが、いずれもみな異様いよう人間にんげんなのでございます。
こは悪夢あくむ、あゝ神よ
悪夢 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
ガバとはね起きた石見守いわみのかみ大久保長安おおくぼながやすは、悪夢あくむにおびやかされたように、枕刀まくらがたなを引ッつかむなり、桜雲台本殿おううんだいほんでん自身じしん寝所しんじょから廊下ろうかへとびだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
深い谿たにが下にあるのも気がつかぬかのようにそこを越えて、やがて向うの杉の森の上あたりで姿は見えなくなってしまいました。私達は悪夢あくむからめたように、呆然ぼうぜんと立ちつくしていました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
奇々怪々な光景が悪夢あくむのように眼に映ります。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)