怠屈たいくつ)” の例文
主翁ていしゅが一所懸命になって云うので、避暑に来て怠屈たいくつしている時であったから、時間つぶしにと思って番地を聞いたうえで出かけて往った。
二通の書翰 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「だが、怠屈たいくつで金があるからあんな事を思ひ立つことだらうが、生きとむらひなどは増長の沙汰だよ。藤屋も惡いには違ひない」
なかば目をとぢて怠屈たいくつさうに椅子にもたれて居た検事は、立つて論告をした。被告の控訴は理由がないから棄却せられたしと云ふ丈のものであつた。
公判 (新字旧仮名) / 平出修(著)
あわれなにわとりは、小舎こやなかにいて、どんなに怠屈たいくつをしたでしょう。ただじっとしていて、みみくものはやみなかくるかぜゆきおとばかりでありました。
ものぐさなきつね (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのたびに高窓を見上げていると、一日こうやって怠屈たいくつに送るのが物憂ものうかった。何かして遊びたいと思ったが、誰も訪ねて来るものがない。時計が三時を打った。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「何、神田の平次、それは珍らしいな、眞つ直ぐに庭に入るが宜い、丁度怠屈たいくつして居るところだ」
どの病室びょうしつにも、顔色かおいろわる患者かんじゃが、ベッドのうえよこたわったり、あるいは、すわったりして、さも怠屈たいくつそうに、やがてれかかろうとする、窓際まどぎわ光線こうせん希望きぼうなくつめているのでした。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あーあ。」と、このとき、だれやらが、怠屈たいくつまぎれにあくびをしていました。
みつばちのきた日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おうさまは、毎日まいにち、このさびしい、さむ景色けしきて、らすことに怠屈たいくつなされました。ゆきってきて、あたりはしろになり、やがて、そのとしれて、正月しょうがつになろうとしたのであります。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
きたくにおうさまは、なにかをたのしませ、こころよろこばせるような、おもしろいことはないものかとおもっていられました。毎日まいにち毎日まいにちおなじような、単調たんちょう景色けしきることに怠屈たいくつされたのであります。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
みなみ国王こくおうも、かつては、お怠屈たいくつでいらせられたようでございます。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
きっと、ふたりのおともだちは、いまごろは、怠屈たいくつして、このあかるいはなやかなまちをもう一たいとおもっていなさるでしょう。そして、あなたのうえをうらやましがっていなさるにちがいありません。
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)