心切しんせつ)” の例文
久八はとくさつし何事も心切しんせつを盡し内々にて小遣錢こづかひぜに迄も與へかげになり日向ひなたになり心配してくれけるゆゑ久八が忠々まめ/\敷心にめでて千太郎は奉公に來し心にて辛抱しんばう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
返禮が氣の毒なとて、心切しんせつかは知らねど十軒長屋の一軒は除け物、男は外出そとでがちなればいさゝか心に懸るまじけれど女心には遣る瀬のなきほど切なく悲しく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこで富豪はかねを出して胡を自分の家へ置いた。胡はこどもを教育するにあたって心切しんせつで勤勉であった。それに学問が博くてしたっぱな人間でないということが解った。
胡氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
しかし若崎の何か勘ちがいをしたかんがえっているらしいもうひらいてやろうというような心切しんせつから出た言葉に添った態度だったので、いかにも教師くさくは見えたが、威張いばっているとは見えなかった。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
流し是は/\藤八樣御心切しんせつなる其おことばもとより人は殺さねど日々夜々の拷問がうもんきびしく假令たとへ白状なさねばとてとても助かるいのちにあらずと斷念あきらめし故一時も早く此世の苦痛を遁んと覺悟を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
源七が家へはらぬが能い、返礼が気の毒なとて、心切しんせつかは知らねど十軒長屋の一軒はけ物、男は外出そとでがちなればいささか心に懸るまじけれど女心には遣る瀬のなきほど切なく悲しく
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「強情はってたら、返してくれるとでも思ってるだろう、ばかなかたね、家の姉さんが見込んだ限りは、なんとしたって、この家から帰って往かれはしないよ、お前さんはばかだよ、私達が、こんなに心切しんせつに云ってやっても判らないのだね」
蟇の血 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
げん七がいゑへはらぬがい、返禮へんれいどくなとて、心切しんせつかはらねど十けん長屋ながやの一けんものおとこ外出そとでがちなればいさゝかこゝろかゝるまじけれど女心をんなごゝろにはのなきほどせつなくかなしく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
早速我方へ連歸つれかへ何是なにこれとなく心切しんせつに世話をなしける事たの母しき男氣をとこぎなり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)