微傷かすりきず)” の例文
又四郎は心のくない者だから離縁したいと思っているが、そこには何かのとががなければならない。お前が唯少しの微傷かすりきずを負わせてくれればい。
黄八丈の小袖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
其勢が余りはげしかつたので、横山は上田の腕に微傷かすりきずを負はせたにもかゝはらず、やいばを引いて逃げ出した。上田は追ひすがつて、横山の後頭を一刀切つて引き返した。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そのたんび微傷かすりきずです、一年三百六十五日、この工合じゃあ三百六十五日目に、三百六十五だけ傷がついて、この世をよろしく申させられそうで、わっしも、うんざり。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
またゝに、かり炭燒すみやきほふられたが、民子たみこ微傷かすりきずけないで、まつたたまやすらかにゆきはだへなはからけた。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
塚田巡査は歯噛はがみをした。微傷かすりきずではあるが、の手首からは血が流れていた。の二三人も顔や手の傷を眺めながら、失望と疲労との為に霎時しばらく茫然ぼんやりと立っていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
決して殺すには及ばない。唯ほんの微傷かすりきずでも付けてくれればい。そうして、お前も喉を突く真似をしろ。そこへ誰かが飛び込んで取しづめるから案じることはない。
黄八丈の小袖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
旅順りよじゆん吉報きつぱうつたはるとともに幾干いくばく猛將まうしやう勇士ゆうしあるひ士卒しそつ——あるひきずつきほねかは散々ちり/″\に、かげとゞめぬさへあるなかをつと天晴あつぱれ功名こうみやうして、たゞわづかひだり微傷かすりきずけたばかりといたとき
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
敵は屈せずに石を投げたが、幸いに石が小さいのと、距離が余りに接近しているのとで、われには差したる損害を与えなかった。それでも二三人は顔や手に微傷かすりきずを負った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)