御辺ごへん)” の例文
旧字:御邊
先ごろ、ご近習きんじゅの気のきいたのが一人欲しいようなことを仰っしゃっていたから、御辺ごへんの運がよければ、多分、採用になると思うがね
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところで、わしが源平の武士を見るにどれもこれも小粒じゃ、将たるうつわなく士たる勇を持つ人もまれな程じゃが、拙僧の眼力をもってするに、残るは唯、御辺ごへんだけじゃ。
御辺ごへんほどに剛なる人いまだ見ず、我に年来としごろ地を争ふ敵あつて、ややもすれば彼がために悩まさる、しかるべくは御辺、我敵を討つてたび候へとねんごろかたらひけれ、秀郷一義もいはず
着くとそのまゝ『此方へ』とっしゃって、奥庭の亭へお通しなされ、あたりに人を一人も置かず、さし向いにおなりなされて、田兵たひょう殿、今度ばかりは御辺ごへんの命を三成が助けて進ぜるぞと
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これです。この壺に関して、とかく迷惑なうわさの横行いたす折りから、御辺ごへんがおたずねくだすったのは、何よりありがたい。一つ、御辺ごへんを証人として、無責任なごしっぷを打ち消すために、壺を
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「退いてよければ勝手に退くのだ、御辺ごへんのお世話にならぬ。」
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
御辺ごへんのおうわさはかねてからよく聞いておる。そちらでは初対面と思われておるか知らんが、この筑前は何やら旧知の如き気がいたす。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「度々のことで恐れ入るが、今度も御辺ごへんが山の手に向って頂けまいか」
御辺ごへん、ひとつかぞえてくれまいか。」
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
御辺ごへんはどう受け取っておられるか知らんが、伝右衛門としては、かりそめにも、敵方の間諜たる者を、見のがした覚えなどはない。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御辺ごへんがかえれば我らも帰る。」
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
それだけにわば筑前の無二の股肱ここう。いや官兵衛、御辺ごへんとならば、きっと肝胆かんたん相照らすものがあろうぞ。刎頸ふんけいを誓ったがよい
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……お城よりおゆるしがあれば、明日にでも、御辺ごへんを伴うて、岐阜城にのぼり、共に君前へ伺って、なお談合もいたそう程に
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……だんだん伺ってみれば、貴公とは、以前の同僚のようなものだが、もしや御辺ごへんは、あだ名を“青面獣せいめんじゅう”と呼ばれていた楊志ようし殿ではないのか
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「追々、時刻もない。評議にかかる前に、御退座を願ってはどうじゃな。それとも、何か御辺ごへんの都合でもあるのか。筑州殿」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それは覚えておるよ。たしかあの夜はひどい暴風雨あらしであった。そして、初めて御辺ごへんを見た所は、龍泉の正季まさすえが家の奥。……な、柳斎、いや右馬介どの」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おお御辺ごへんが、徳川どのの御内おうちに、井伊の赤備あかぞなえと、聞えの高い、兵部直政どのか。……いや、お若いのう。それがしが、佐々さっさ成政。お見しりおかれよ」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「その印籠を持って、ここを出ては、御辺ごへんのお身にも、禍いがかかろうではないか。——詮議の上に必要な兇状者の証拠品じゃ。禍いを捨てて行かれい」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょっと寸法にははまらないかのように見うけられるが、御辺ごへんには御辺の寸法というものをちゃんとお備えになっておられる。むしろおうらやましいほどである
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……がのう、筑州殿。三法師君の御出座を求めたのは御辺ごへんとはちがうか。——修理は、いっこうに知らんが」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御辺ごへん、その男を台所へとものうて、飯なと食わせ、一室へ監禁して、誰にも会わせぬように始末しておけ」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ほ。三州足利党の一家にて、音に聞ゆる細川殿とは、御辺ごへんであったか。お名は前々から聞いておる」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、三成どの、主人に不足はないが、御辺ごへんと拙者とでは、身を置く地の理において相違がある。御辺は、中央の地に働き、拙者は北国の僻地へきちを出ることはない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この戦時、しかも敵の残党を詮議せんぎしておる此方このほうにたいして、御辺ごへんのいっていることは、まるで平時の医者の言だ。いまはそんなことに耳をかしているいとまはない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「昨日今日、三千貫とわめいてみたが、売れない。御辺ごへんを眼のあるお人と見て、半分に負けてやる」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「虎と申せば、その虎もこのたびは、よくよく暴虎ぼうこの野望も及ばぬことを知ったか、神妙に、頭をって、詫び入った。以後は、御辺ごへんとの境にも、うるさいことはなくなろう」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「たしかに、どこかで見た女性にょしょうには相違ないが、さて俄に、思い泛かぶところもない。それに御辺ごへんのものごしといい、よも、お夫婦ふたりとも、根からの舟芸人では、おわすまいがの?」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや御辺ごへんはそれがもう当然常時のお支度だ、道誉の平服こそごかんべんありたい。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御辺ごへんに謹慎を命じおいたのは、坊主にでもなる心かと察したからだ。……が、そうではなく、やはり武士なれば武士で死にたいというならば、それもよからむ。一方の大将を御辺に託そう。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「問いたいのは、御辺ごへんの戦意。——そも御辺にはいかなる勝算をお持ちか」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「両名へは、御辺ごへんからつぶさに、策をさずけ、注意などしてもらいたいが」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「使番でもない御辺ごへんが、あわてふためいて、何しに駈けた。逃げて来たか」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「その御辺ごへんが、深夜、何用があって、本丸木戸を忍びやかに叩かれるか」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、よい所へ。じつは獄舎ひとやのうちの先帝が、頻りに御辺ごへん
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、御辺ごへんのことは知らん。しかしそれがしこそ、余人におくれは取らぬものと、みずからかたく信じておる。故に、先陣はそれがしにと、誰へ遠慮もなく望む次第でござる。中川清秀にこそお命じあれ」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まだ御辺ごへんには、お聞きおよびでなかったかの?」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、御辺ごへんなどは、まだまだ……」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)