御許おんもと)” の例文
これぎりむなしく相成候が、あまり口惜くちをし存候故ぞんじさふらふゆゑ、一生に一度の神仏かみほとけにもすがり候て、此文には私一念を巻込め、御許おんもと差出さしいだしまゐらせ候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いとなみ候へども彼地は至て邊鄙へんぴなれば家業もひまなり夫故それゆゑ此度同所を引拂ひきはらひ少々御内談ないだんも致度事これありて伯父上をぢうへ御許おんもと態々わざ/\遠路ゑんろ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
程経て次第に警備ゆるみて候得者さふらへばそのゝちは心安くかの御許おんもとへ通ひ候、然者しかればこれは去年の秋より実に一年後のこと也
丁度其時に将門もまた親王の御許おんもと伺候しこうして帰るところで、従兄弟同士はハタと御門で行逢ふた。彼方かなたがジロリと見れば、此方こちらもギロリと見て過ぎたのであらう。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
……さても三人みたり一つ島に流されけるに、……などや御身おんみ一人残り止まり給うらんと、……都には草のゆかりも枯れはてて、……当時は奈良の伯母御前の御許おんもとに侍り。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
御許おんもとへ差出し置き候を一併せに御推敲ごすいこう下され御遣しの程ねがひ申上候。猶是は足下の高作を別紙にしたためを願ひ猶拙の悪作も相認め候て二枚戸に張り候つもりに御座候云々。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そこでそのワカクサカベの王の御許おんもとにおいでになつて、その犬をお贈りになつて仰せられますには、「この物は今日道で得ためずらしい物だ。贈物としてあげましよう」
一筆ひとふでしめし上げまいらせそろ。さてとや暑さきびしくそうろうところ、皆様には奈何いかが御暮しなされ候や。私よりも一向音信いたさず候えども、御許おんもとよりも御便り無之これなく候故、日々御案じ申上げ候。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
幼児をさなご御主おんあるじよ、われをもたすたまへ。」このかた、かた、いふ木札きふだおとが、きよかねごとく、ねがはくは、あなたの御許おんもとまでもとゞくやうに。頑是無ぐわんぜなものたちの御主おんあるじよ、われをもたすたまへ。
「それでこそ早瀬は救われまする! ……救いの神様へ、宮様御許おんもとへ!」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私よりの御無沙汰ごぶさた、右の次第にて、まことに申訳なく候えども、あまり御許おんもとよりも手紙なきゆえ、定めし子供を控え手もすくなく其日々々のことに追われ、いとまなきからだとは御察し申しながら
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私事恥を恥とも思はぬ者との御さげすみをかへりみず、先頃して御許おんもとまでさんし候胸の内は、なかなか御目もじの上のことばにも尽しがたくと存候ぞんじさふらへば、まして廻らぬ筆にはわざと何もしるし申さず候まま
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ところがその矢がキジの胸から通りぬけて逆樣に射上げられて天のヤスの河の河原においでになる天照らす大神高木たかぎの神の御許おんもとに到りました。この高木の神というのはタカミムスビの神の別の名です。
「大塔宮様御許おんもとへ!」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
先達而せんだつて御許おんもとにて御親類のやうに仰せられ候御婦人に御目に掛りまゐらせ候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ここに皇弟ミヅハワケの命が天皇の御許おんもとにおいでになりました。
御許おんもと
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)