御嶽山おんたけさん)” の例文
新字:御岳山
やまなつらしくなると、すゞおときこえるやうにります。御嶽山おんたけさんのぼらうとする人達ひとたち幾組いくくみとなく父さんのおうちまへとほるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
御嶽山おんたけさんを少し進んだ一ツ橋どおりを右に見る辺りで、この街鉄は、これから御承知のごとく東明館前を通って両国へ行くのである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
木蘇きそ御嶽山おんたけさんが、その角々しき峰に白雪をいただいて、青ぎった空に美しい。近くは釜無山それに連なる甲斐の駒ヶ岳等いかにも深黒な威厳ある山容である。
白菊 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
南蛮渡来の法術を使い遁甲とんこう隠形おんぎょう飛行ひぎょう自在、まだ弱冠の身でありながら、すで総帥そうすいの器を有し、数年前より御嶽山おんたけさん上にとりでを設けて武威を張る御嶽冠者みたけかじゃと申すお方!
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そこは御嶽山おんたけさんにのぼる黒沢口からさらに一里ほどの奥に引っ込んでいるので、登山者も強力ごうりきもめったに姿をみせなかったそうです。さてこれからがお話の本文ほんもんと思ってください。
木曽の旅人 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
御嶽山おんたけさんへでも行った時、よく気をつけて見ていらっしゃい、石窟いわむろの閉めきったところで炭火をどんどん起してちぢかんでいると、心気しんきの弱いものは、たまにこんな死に方をする。
顎十郎捕物帳:06 三人目 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
御嶽山おんたけさんのお水を持っておいでよ、なにをグズ/\してるんだよ、今ッから居寝いねむりなんぞしやアがって、花魁、しッかりしなましよ、サこれを呑んで気を附けなけりゃいけまへんよ花魁
山上に立つと、さすがにほっとして、疲れさえ感じない。時々霧におそわれたが、それが晴れると今登ってきた側のはるか彼方に、日本アルプスの連山、正面に木曽の御嶽山おんたけさんの威容がのぞまれた。
木曾のナア木曾の御嶽山おんたけさんは夏でもさぶあはせやりたや袷やりたや足袋たび添へて
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
先年、彼が父の病をいのるために御嶽山おんたけさんの方へ出かけたころから見ると、父も次第に健康を回復したが、しかしめっきり老い衰えて来たことは争えない。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「さようさよう、その内訌じゃ。家臣花村甚五衛門は、主君を見限り領地へ引退、洞院左膳は謀反をする。御嶽山おんたけさんには、御嶽冠者みたけかじゃ。四方八方敵ばかり、社稷艱難しゃしょくかんなんの有様でござる」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
木曽きそ御嶽山おんたけさんは夏でも寒い
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
部屋へやの壁の上に昔ながらの注連縄しめなわなぞは飾ってあるが、御嶽山おんたけさん座王大権現ざおうだいごんげんとした床の間の軸は取り除かれて、御嶽三社をまつったものがそれに掛けかわっている。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
……そういう事件がどうして起こったか、詳しくお話しいたしましょう。……が、その前にあなたをお連れし、御嶽山おんたけさんへ行かなければなりません。あなたを兄君にお逢わせするため
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
木曾きそ御嶽山おんたけさんなつでもさむ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小父をじさんのうちのある木曾福島町きそふくしままち御嶽山おんたけさんちかいところですが、あれから木曽川きそがはについて十ばかりも川下かはしも神坂村みさかむらといふむらがあります。それがとうさんのうまれたむらです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
馬籠まごめえきまでれば御嶽山おんたけさんはもうとほくはない、そのよろこびがみんなむねにあるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
木曾福島の近くに至って御嶽山おんたけさんから流れ出るいちじるしい水流とその他の支流とを合併して、急に水量を増し、東山道太田駅からおよそ九マイルを隔てた上流にある錦織村にしこうりむらに至って
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)