ひく)” の例文
感歓かんくわんまりて涙にむせばれしもあるべし、人を押分おしわくるやうにしてからく車を向島むかふじままでやりしが、長命寺ちやうめいじより四五けん此方こなたにてすゝむひくもならず
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
先生しぇんしぇい此処こゝは天神前で、わしはおめえさんと喧嘩する事は、うなったからは私はひくに引かれぬから、お前さん方三人にかゝられた其の時は是非がえ事じゃが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ひく而已のみ飛石とびいしに迄の付居たるはいかなることぞととはるゝに傳吉こたへて其夜畑村はたむらへ參り河原にて物につまづきしが眞暗まつくらにて何かわかりませぬゆゑ早々立歸り翌朝よくてうすそに血がつき居たるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
火脉くわみやく気息いき人間にんげん日用にちよう陽火ほんのひくはふればもえてほのほをなす、これを陰火いんくわといひ寒火かんくわといふ。寒火をひくかけひつゝこげざるは、火脉の気いまだ陽火をうけて火とならざる気息いきばかりなるゆゑ也。
霧にふねひく人はちんばか 野水
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ひく機會はずみに兩手のゆび破羅々々ばら/\と落て流るゝ血雫ちしづくあぜの千草の韓紅からくれなゐ折から見ゆる人影に刄を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)