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巨濤
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おほなみ
剩へ
辿り
向ふ
大良ヶ
嶽の
峰裏は——
此方に
蛾ほどの
雲なきにかゝはらず、
巨濤の
如き
雲の
峰が
眞黒に
立つて、
怨靈の
鍬形の
差覗いては
消えるやうな
電光が
山の
端に
空を
切つた。
西も
東も
果しなき
大洋の
面では、
荒浪騷ぎ、
艇跳つて、とても
仔細かい
話などは
出來ない、かく
言ふ
間も
巨濤は、
舷に
碎けて
艇覆らんとす、
大尉舵をば
右方に
廻し、『
進!。』の
一聲。
天色倏急に
変り
黒雲空に
覆ひければ(是雪中の常也)
夫空を見て大に
驚怖、こは
雪吹ならんいかゞはせんと
踉蹡うち、
暴風雪を
吹散事
巨濤の
岩を
越るがごとく、
飇雪を
巻騰て
白竜峯に
登がごとし。