山肌やまはだ)” の例文
玉太郎等三人が山肌やまはだ小径こみちをころがるように谷の方へおりてゆく様子も、もちろんカメラにおさめられていた。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ついこの間までは、頂上の処だけは、まだらに消え残っていた叡山えいざんの雪が、春の柔い光の下に解けてしまって、跡には薄紫を帯びた黄色の山肌やまはだが、くっきりと大空に浮んでいる。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
山越えで佐用へ出て来る途中——殊に竹山城から少し先の低い山肌やまはだには、可憐な鉄砲百合がたくさん咲いていて、その一枝を自動車の中に持ちこんだところ、せるような匂いで
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
背後には、青空をくっきりとかくした、峰々みねみね紫紺しこん山肌やまはだ、手前には、油のようにとろりと静かな港の水、その間に、整然とたち並んだ、白いビルディング、ビルディング、ビルディング。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ふたゝふ、東向ひがしむかうに、そのくも日暮崎くれのさき御室みむろしようならんで半島はんたう真中まんなかところくもよりすべつてみづうみひた巌壁がんぺき一千ぢやういたゞきまつ紅日こうじつめ、夏霧なつぎりめてむらさきに、なか山肌やまはだつちあかく、みぎは密樹緑林みつじゆりよくりんかげこまやかに
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こんどのたびでは、リンデレード山脈さんみゃくれはてた山肌やまはだや、オーヴェスホルム荘園しょうえんや、クリスチャンスタッドの教会のとうや、ベッカ森の王家おうけ領地りょうちや、オップマンナ湖とヴェー湖のあいだのせまいみさき
粟田口あわたぐちの雑木の葉がすっかり落ちきって、冬日の射す山肌やまはだに、とうらんが赤く見える。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀麗しゅうれいな富士の山肌やまはだに、一まつすみがなすられてきた、——と見るまに、黒雲のおびはむくむくとはてなくひろがり、やがて風さえ生じて、みわたっていた空いちめんにさわがしい色をていしてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)