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實子
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じつし
時に嘉川主税之助は我が
實子の
愛欲に
眼闇みて家の
亂れは一向構はず彼安間平左衞門始め新參の家來を
相手に
只管惡事を
此家へ
嫁入りせぬ
以前、まだ
小室の
養女の
實子で
有つた
時に、いろ/\の
人が
世話をして
呉れて、
種々の
口々を
申込んで
呉れた、
中には
海軍の
潮田といふ
立派な
方もあつたし
家に
生㧞きの
我れ
實子にてもあらば、かゝる
迎へのよしや十
度十五たび
來たらんとも、おもひ
立ちての
修業なれば一ト
廉の
學問を
研かぬほどは
不孝の
罪ゆるし
給へとでもいひやりて
情なき事に思ひ或時は
放蕩の
擧動等御座候故是又其儘に
打捨難く
諫めつ
宥めつ致し候中
不※藤五郎
不行跡のこと御座りしを主税之助は幸ひに亂心と申
立座敷牢に
押込我が
實子佐五郎を
ば
寶澤と改めける感應院は元より妻も子もなく
獨身の事なる故に寶澤を
實子の如く
慈みて
育けるが此寶澤は
生ながらにして
才智人に
勝れ
發明の性質なれば
讀經は
云に
及ず其他何くれと
教るに一を