孰方どちら)” の例文
... 孰方どちらも食品屋にありますから今度買って来て差し上げましょう」大原「どうぞ願いたいもので、その朝は何をお飲みです」お登和
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それもそんなに長い間の辛抱をいるのではない。大体今度の雪子の縁談が孰方どちらかに極まる迄の間、と思ってくれて差支えない。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
自分は肉体と精神と孰方どちらを愛するかといへば、言ふ迄もなく精神を愛するから酒はめられないと口癖のやうに言つてゐた。
飲酒家 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
孰方どちらかといえば私は旅行していても旅館に閉じこもっている方で、名所旧跡というものに詩情は動かない方であった。
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
孰方どちらかと云えば明朗な美男である千代三の溌剌性とは全く異った雰囲気であります。
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
さればとて舊主を裏切っては武士の一分いちぶんがすたれることをおもんぱかって、孰方どちらへも義理が立つように失明の手段を取ったのであると。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
自分は肉体と精神と孰方どちらを愛するかといへば、言ふ迄もなく精神を愛するから酒はめられないと口癖のやうに言つてゐた。
... 全体芋章魚と言うのは箸でちぎって見て孰方どちらが章魚だかお芋だか分らないように柔くなければ本式でありません」妻君「そうですかねー、章魚を煮るとき小豆あずきを ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
蔭で連絡があることはむを得ないとあきらめていたか、孰方どちらとも分らないけれども、表面妙子を追い出したことで一往満足しているらしかった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
孰方どちらとも真実ほんとうだらう。そしてもつと真実ほんとうなのは、親子のどちらもに取つてこれが一番都合がよいからであらう。
しかし長く煮て緩々ゆるゆる味を出そうとするものは孰方どちらかというと時間の早過ぎるより遅過ぎた方が出来損じもすくないようですし、火は強過ぎるよりも弱過ぎた方が大丈夫です
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
孰方どちらかであろうと思えるにつけても、今度本家へ訪ねて行けば姉から何かしらそれに関連した話が出そうなところなので、本人の雪子は勿論もちろん
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そのむかし仏蘭西のルツソオは漂泊の旅にのぼつて、ある疑ひが心に起きた時、孰方どちらめたものかと石を投げて占つたといふが、大観はルツソオと同じ気持で、じつと水の行方ゆくへを見た。
... 買って料理に使いますが犢の肉もやっぱり一週間位けますか」お登和嬢「イイエ犢の肉は牛肉よりも食頃たべごろが速いのでく寒い時でもほふってから三、四日目位でございます」妻君「犢の肉はやっぱり大牛おおうしのように牝牛めうしの方がいいのでしょうか」お登和嬢「犢の時は孰方どちらも同じ事ですが大概おすばかりでめす滅多めったほふりません。 ...
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それから晩飯のぜんが運ばれ、食事を済ましてしまう間、二人はとうとう孰方どちらからも物を云いかけませんでした。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「有難う。お礼は孰方どちらにした方がいの。接吻キツス?」女優は美しい眼で道具方の顔を見た。化粧石鹸しやぼんでよく洗つた上に、香水でも振りかけなければ、とて接吻キツスが出来さうな顔ではなかつた。
もっとも妙子は、孰方どちらにしてももう完全に手後れになったに違いないから、自分は既にあきらめているとも云っている。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
内容と広告と孰方どちらに新知識が多いと訊かれたら、誰だつて選択に迷はない筈だ。
うちの店などは、主人夫婦も割合に親切だし、店員にも意地の悪い者は少いし、おまけに例のお嬢さんのお顔を、朝晩拝む事が出来るのだから、孰方どちらかと云うと
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼等は孰方どちらも、もつと立派な掛替かけがへのあることを知つてゐるから……。
つまり亭主への反感と、品子への反感と、孰方どちらの感情で動いたらよいか板挟みになつてしまつたのである。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
万事に公平な真野博士は、孰方どちらの馬にも味方をし兼ねて
彼にその話をしてくれたのは、多分老女の讃岐さぬきであったか、乳人めのとの衛門であったか、孰方どちらかであろう。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
孰方どちらかと云えば愛嬌あいきょうに乏しい、朴訥ぼくとつな感じの、妙子が批評した通り「平凡な」顔の持ち主で、そう云えば体の恰好かっこう、身長、肉附、洋服やネクタイの好み等々に至るまですべて平凡な
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
但し、その晩は塚へお参りをしたあとで行者の庵に泊めて貰ったのか、宿へ戻って寝たのか、聞書の記事ではそこがはっきりしないけれども、そう云う細かい事柄は孰方どちらでもよい。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
多くの東京人がそうであるように孰方どちらかと云えば出不精の方で、めったに旅行などしたことのない要は、一と風呂浴びて宿屋の欄干らんかんっている浴衣ゆかたがけの自分の姿をかえりみると
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
動機は真面目まじめであるらしかったが、孰方どちらの家でもそんなことは許すべくもなかったので、直きに見つけ出して双方に連れ戻して、そのことはたわいもなく解消したかのごとくであったが
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そう云う詮議立せんぎだては此の小説の埒外らちがいであるから、今は孰方どちらでもよいとしておこう。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
孰方どちらとも決定が付かずにいたが、三時頃に陣場夫人から電話があって、あんた、あれからどんな工合、と云われてみると、ふん、もう大方ええねんわ、と、幸子はついそう答えてしまった。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
(大貫は面疔、恒川は慢性中耳炎で、孰方どちらも急劇な死に方だつた)しかし大貫のことは、前に何かに書いたこともあり、私よりは岡本かの子女史の方が適任であらうと思ふから、ここには略する。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
幸子には孰方どちらとも分らなかったが、義兄にしてみれば、義妹たちとの折合がよくないと云う世評があるのを気に病んでいるところもあって、あるいはそれがこう云う形で現れるのかも知れなかった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
もっとも二人の間には云わず語らず「了解」が出来ていたのですから、極めて自然に孰方どちらが孰方を誘惑するのでもなく、ほとんどこれと云う言葉一つも交さないで、暗黙のうちにそう云う結果になったのです。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
孰方どちらも目的を達しないで河内介に討たれてしまったのであるが、かの城内の奥庭に於いて則重を兎唇みつくちにし、ついで彼の片耳をぎ去った者は誰であったろうか? 「道阿弥話」と「見し夜の夢」には
啓坊にも何か魂胆があって、此方に見付けられないように、隠れて見物していたか、孰方どちらかであろう、それで、板倉が来たことも、こいさんはどうか分らないが、自分や雪子ちゃんは知らなかったし
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
孰方どちらもしつかり者だつたのが不和の原因になつたのである。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
孰方どちらがより美男子であるかを批判していたでもあろう。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「や、Tさん、此れから孰方どちらへお出掛けです。」
恐怖 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)