媒人なこうど)” の例文
さてその上で双方に不服がなければ改めて媒人なこうどを立て、結納を取り交し、五とか、七荷とか、十三荷とか、花嫁の荷物を婚家へ運ぶ。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その頃、横浜初音町の辺で開業していた漢方医の吉益よします某の媒人なこうどで、新たに妻として迎えたひとが、ぼくの母、山上いく子であった。
角「癒らねえと思えばこそ盃をさせるのだ、サア此処こけへ来て早く内輪ばかりだから酒だけでいゝ、太左衞門媒人なこうどになって早く酌」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
先方では待っていたらしかった。殊に娘さん自身が待っていたらしいということさえ、媒人なこうどの口から穂積家へ伝えられた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
そら、媒人なこうどでしょううちは? だから、阿父とうさんも阿母かあさんも早めに行ってないと不好いけないって、先刻さっき出て行ったのよ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
また天皇は、弟のハヤブサワケの王を媒人なこうどとしてメトリの王をお求めになりました。
屏風を隔てて、このくれないの袴した媒人なこうどは、花やかに笑ったのである。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お婆さん、私はまだ妻室かないがないから、媒人なこうどをたのみたいが」
断橋奇聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
この間、沓野くつの村のお帰りに立ち寄られた象山先生——あの松代まつしろの佐久間修理しゅり殿じゃ、そのお方が、媒人なこうどしてとらせるともいうておられる。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我ながらかる悪人を憎いとも思召おぼしめさず、改心の上は媒人なこうどになって、良い嫁を世話して遣ろうとまで仰しゃるは、何ともどうもおなさけの深いお方
この年の頃になって、媒人なこうど表坊主おもてぼうず大須おおすというもののむすめてるめとれと勧めた。「武鑑」を検するに、慶応二年に勤めていたこの氏の表坊主父子がある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
媒人なこうどやら、叔父の小林鉄之丞やら、婚家の定紋提灯じょうもんちょうちんをぶら下げて、麻裃あさがみしもの影を、ゆらゆら、藪に描きながら、だらだら坂を降りて行った。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
婆「よすがいよ、又五八がそんな事を言わなければいのに、相手は侍で名主が媒人なこうどだというから、間違まちげえが出来るといけねえからかねえがうがんすよ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
縁者廻りの第一に彼と新妻は正装して、この度の婚儀に、媒人なこうどの声がかりを賜わった主君のお従兄弟いとこ名古屋因幡守なごやいなばのかみを堀川の邸に訪ねて
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
友「お村とわたくしを本当に媒人なこうどになって夫婦にして下さいますか、どうぞ願います、拝みますから」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
頂上の転法輪寺てんぽうりんじには、松尾刑部やら、なつかしい顔が、大勢待っていてくれた。刑部は久子が嫁いだ時の媒人なこうどである。みないたわりぬいてくれる。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丈「臨終りんじゅうの願いに清次殿、お媒人なこうどとなって、おいさと重二郎どのに婚礼の三々九度、此所こゝで」
媒人なこうどたる名古屋因幡守なごやいなばのかみは主筋であり大身たいしんに過ぎるので、こちらから辞退して、御家臣のなにがしが夫妻で、今夜は手伝いがてら見えているらしい。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五「往って下せえ、なんとマア名主が媒人なこうどだって、名主まで馴合っていやアがるんだもの」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「オ、梅湯か。ム、たいそうかおりがいい、酢味すみもちょうどだ。ところで婆さん、梅っていう字はばいとも書く。楳の意味はまた、媒人なこうどにも通じるッてね」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
改心すればわしが妹よりはまさった女房を持たせよう、わし媒人なこうどになって生涯親しく交際つきあおうじゃないかと、実になさけことばで中々感心致したな、わしもそこで真実改心する気になって
「沢庵坊、ほっとしたであろうが。おぬしは、そもそも、武蔵とお通とをくッつけた不義の媒人なこうどじゃほどにの」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御重役様が媒人なこうどで芽出度く夫婦になるので、これは小三郎さまからの御書面でございます
……はははは何だかまるで、媒人なこうどの言い草みてえになッちゃったなあ。——じゃあ兄さん、行ってきますよ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
矮虎も恰好なのをそのうちに見つけるサと皆してなだめ、また宋江は、秦明のえない孤愁を思いやって、自分が媒人なこうどの労をとり、花栄の妹を、秦明の妻にめあわせた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お媒人なこうどの名代殿には、いずれへ退散してしまわれたか。寧子どの、そこらに、小鼓はないか」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを、無理に引っ立てて、玄関へ駈け出ると、媒人なこうどは、平謝ひらあやまりに、謝っていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と親族、媒人なこうどの一群が、松明をかかげて、途中まで、姫君の迎えに来る。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「幸い、石川主殿とは、面識もあるゆえ、拙者からも、示談の口添えいたそう。——その代りに、庄次郎へ、一札いっさつ書かせ、媒人なこうどと同道して、極力、先方へあやまるにかぎる。お互いに、前途のある身だ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——しかし、今はもうこの城も、わが旗の下に、確乎と占領されたのだから、その美人をめとって、溺れない程度に、そちの妻としても誰も非難するものはないだろう。玄徳が媒人なこうどしてとらせようか」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
両家のあいだに、華やかな婚儀がりむすばれ、媒人なこうど
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、伯母も、媒人なこうども、駕のうしろでそっと眼をふいた。
下頭橋由来 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おかげで私も今月は一組の媒人なこうど役をたのまれている。
美しい日本の歴史 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
したのが誤りだった。媒人なこうどが若い
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)