売僧まいす)” の例文
売僧まいす、ちんかも座興ざきょうにしては折檻せっかんが過ぎようぞ、眉間傷が夜鳴き致して見参けんざんじゃ。大慈大悲のころもとやらをかき合せて出迎えせい」
ことによったら『売僧まいすども』の手品かもしれぬ、とのことだったけれど、これもたぶんきわめて自然に生じたことであろうと思う。
「ふらちな売僧まいすめ、文殊菩薩もんじゅぼさつの勢至菩薩のと、だれがさようなたわごとをしんじようか。あいや一火先生いっかせんせい、ぜひ、咲耶子はこの長安ながやすのほうへ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
乞食坊主、売僧まいす坊主、オゲ坊主、チャンチャン坊主、糞坊主、スッタラ坊主、ハッチ坊主、横着坊主、毛坊主、カッタイ坊主などこれである。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
売僧まいす、その袖の首は、何としたものじゃ、僧侶の身にあるまじき曲事くせごと有体ありていに申せばよし、いつわり申すとためにならぬぞ」
轆轤首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「それは売僧まいすたくぼんならずさ。対照コントラストのために態〻わざわざ鳴らないところを拵えて置いてお上りさんに有難がらせるのさ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それは恐しい邪悪な売僧まいすであったにしても、もう一度京姫の顔が見度いというほかは、何の望みもない村松金之助に取っては兎にも角にも救いの神でした。
いずれ末世における売僧まいす仕業しわざであるが、質屋の壁で風に吹かれている有様は、涅槃会ならぬ日の事と解したい。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
彼が再びこの店先に立たないのをみると、やはりそれは真実の予言で、彼は夫がひと口にけなしてしまったような商売ずくの卑しい売僧まいすではないと思われた。
半七捕物帳:16 津の国屋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
広沢はい事をした。お慈悲深い仏様さへ手の届かなかつた売僧まいすを一人助けた上に、自分の書が田舎の房州路でさへ旅籠銭の代りになるといふ事を知つたのだから。
愛子をうしなった悲嘆の余りにわかに迷信深くなり、売僧まいすの言葉を真に受けて、非常識に畜類を憐れむようになり、自身戌年いぬどしというところから取り分け犬を大事に掛けた。
紅白縮緬組 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今日の紛糾錯綜入乱れた文化の葛藤を解決し制馭せいぎょする威力のないものであるというのが二葉亭の禅に対する断案で、何かの茶咄ちゃばなしのついでに一休いっきゅう売僧まいす、白隠は落語家
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
梶原に向ひ「親父の売僧まいすが熊野から維盛をつれけえり、道にて頭をすりこぼち、この間はいやらしい婿詮索むこぜんさく、引つくくつてつら恥とおめえの外、手ごえゝやつ、村のやつら」
「人間が見たとこ通りなら、世の中に売僧まいすも毒婦もありゃあしねえわサ、おいらなんぞは、島抜けの何のと、世間では悪くいうが、本心は、どんな仏さまよりやさしいのだ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
売僧まいすをも無双の名僧智識に仕立てることができたであろう長井の門地はいま彼自身である。
梟雄 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
一間四面の堂の施主が、売僧まいすの魚説法を憤って
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
往年売僧まいす有て毘沙門経を誦して門戸に立て物を乞。名けて唱門師といふ。是門下に読経するの謂なり。曾て陰陽師の類ひにあらずと云云。是古翁の説なり。
俗法師考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
「よしっ、そのつらの皮をひんいてやるから待て。蜘蛛太くもた、てめえの見たことを、この売僧まいすに話してやれ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこへ行ったら俺のような者でも解脱げだつ往生が出来るかとな。アッハハハ、馬鹿な話だ。懺悔しろとは餓鬼扱いな! これ売僧まいす、よく聞くがいい。懺悔はうぬの専売ではない。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「またそれか、スリの女を手飼いに致す五万石の寺格がどこにあろうぞ。秘密はみな挙ったわッ。どうじゃ売僧まいす! そちの罪業ざいごう、これなる恋尼に、いちいち言わして見しょうか!」
「それ、その売僧まいすを逃がすな」
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「おお、こやつは、元叡山におって、今では吉水の門下で実性とか呼ばれている売僧まいすじゃ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
売僧まいすめッ、よくも化かしおッたなッ。道理で必死とあの女を庇いおッたわッ。スリを
「黙れ! 売僧まいす! 口広の奴め! 問答無益じゃ! そこへ直れ!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
親鸞はおらぬかっ、愚禿ぐとくはどこにおるかっ。すでにここに立ち帰っておろうが。常陸ひたち一国の修験のつかさ播磨公はりまのきみ弁円が、破戒無慙むざんの念仏売僧まいすに、金剛杖の灌頂かんじょうをさずけに参った。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何んと売僧まいす驚いたか! この鬼王丸不死身じゃぞよ!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
売僧まいすッ、御岳みたけ三日のおきてを知らぬか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
売僧まいす!」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
売僧まいす、その霊鳥れいちょうをなんとする」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黙れ、売僧まいす
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
売僧まいすッ」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)