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嚇
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かっ
ふりがな文庫
“
嚇
(
かっ
)” の例文
彼は怒りのために
嚇
(
かっ
)
となり、つぶてのように駆けつけると、かよの上にのしかかっている蔵人の
衿
(
えり
)
を掴み、力まかせにひき起こした。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
僕の顔は何かわからぬものを
嚇
(
かっ
)
と内側に叩きつけている顔になっている。人間の眼はどぎつく空間を
撲
(
なぐ
)
りつける眼になっている。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
縄にとりついている長吉を引摺りながら、前から棒で打ってかかった長太に向って、烈しき怒りと共に、ムク犬は
嚇
(
かっ
)
と大口をあきました。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
肩を
聳
(
そばだ
)
て、前脚をスクと立てて、耳がその
円天井
(
まるてんじょう
)
へ届くかとして、
嚇
(
かっ
)
と大口を開けて、まがみは遠く黒板に
呼吸
(
いき
)
を吐いた——
雪霊続記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それが駐在官の頬を破って血を流したが、血を見て
嚇
(
かっ
)
と猛り立った駐在官から身を
翻
(
ひるがえ
)
して、王女は王宮の廊下を
後宮
(
ザナナ
)
の方へ駆け出して来られた……。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
▼ もっと見る
思わず
嚇
(
かっ
)
となって、彼は拳を固め人々を押分けて飛出そうとする。
背後
(
うしろ
)
から引留める者がある。
振切
(
ふりき
)
ろうと眼を
瞋
(
いか
)
らせて後を向く。
子若
(
しじゃく
)
と
子正
(
しせい
)
の二人である。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
女ふたりに云い込められて、
逆上
(
のぼ
)
せあがった要作は、女房の髪をつかんで滅茶苦茶になぐった。お霜も
嚇
(
かっ
)
とのぼせて、いっそ死んでしまおうと川端へ飛び出したのである。
半七捕物帳:63 川越次郎兵衛
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私はこれを見て、
嚇
(
かっ
)
としてしまって、彼の女の腕を取って、窓から引ずり落そうとしたのです。と、——その瞬間に、彼の女の夫は、ピストルを手にして、飛び出して来ました。
暗号舞踏人の謎
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
実は、益満さんに、飛んで行きましたよ、何うしようかって——するてえと、先生
曰
(
のたまわ
)
く、捨てておけ、と。
嚇
(
かっ
)
としましたよ。張扇で、叩き殺そうかと思いましたが、待てしばし。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
クリストフは
嚇
(
かっ
)
として、曲の半ばで立ち上った。だれもそれを気にかけなかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
児太郎は、また
嚇
(
かっ
)
として
睨
(
にら
)
まえた。弥吉はどう言っていいか分らなかった。どう言っても
歪
(
ま
)
げられて
了
(
しま
)
うのが
何時
(
いつ
)
もの言葉癖ゆえ、黙ってうつ向いた。そして低い声で、うつ向いたまま答えた。
お小姓児太郎
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
いまかれの口から、将軍家こそ罪悪の元兇であるといわれたとき、吉宗は、一とき、
嚇
(
かっ
)
としたが、とたんにまた、この日頃、聞きたいと思っていた言葉をいきなり聞かされたような心地もした。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
房二郎は
嚇
(
かっ
)
となったが、桜所のにこやかに微笑しているのを見ると、気が
挫
(
くじ
)
けてどなり返すこともできなかった。
へちまの木
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お角があの晩、おそく両国の小屋へ帰って来た時分に、まだ茂太郎が帰っていませんでしたから
嚇
(
かっ
)
としました。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
日中
(
ひなか
)
は
硝子
(
ビイドロ
)
を焼くが如く、
嚇
(
かっ
)
と晴れて
照着
(
てりつ
)
ける、が、
夕凪
(
ゆうなぎ
)
とともに
曇
(
どん
)
よりと、水も空も疲れたように、ぐったりと雲がだらけて、
煤色
(
すすいろ
)
の飴の如く
粘々
(
ねばねば
)
と
掻曇
(
かきくも
)
って、日が暮れると墨を流し
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それを見ると、お絹は
嚇
(
かっ
)
とのぼせて、悪女が更に鬼女のようになって、そこの台所にあり合わせた出刃庖丁をとって、孤芳を殺そうとして暴れ込んだので、孤芳はおどろいて庭へ飛び降りる。
半七捕物帳:50 正雪の絵馬
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その無感激のニヤリが私を
嚇
(
かっ
)
とさせた。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
押しのけられた老人は
嚇
(
かっ
)
となり、杖をひきずって、かれらのあとを追った。追いつきながら叫んだ。
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ただに全くもてあましたのみならず、そのあまりに
執拗
(
しつよう
)
な言い分に
嚇
(
かっ
)
と腹を立ててしまいました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「——十幾年かの辛苦が水の
泡
(
あわ
)
となり、まぢかに迫った結婚もだめになった、しかも相手は金
儲
(
もう
)
けが目的なんですからね、これでは
嚇
(
かっ
)
となるのもむりはないと思います」
赤ひげ診療譚:07 おくめ殺し
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
こんな毒口は楽屋うちで言い古されている毒口でしたけれども、単純な米友は
嚇
(
かっ
)
と怒りました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「屠殺者だと」七兵衛は口をあき、そして
嚇
(
かっ
)
となった、「われわれを、屠殺者だと、いうのか」
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
この時、神尾主膳は——よせばよかったのですけれども、来客の手前と、例の通り酒気を帯びていたのだから
嚇
(
かっ
)
と怒って、真先に自分が
長押
(
なげし
)
から九尺柄の槍を
押取
(
おっと
)
りました。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
署名はもちろん、その
主
(
ぬし
)
を暗示するなんの印も付いていない、志保は心をかき乱された、生れて初めて全身の血が
嚇
(
かっ
)
と燃えるように感じ、文を持つ手が恥ずかしいほど顫えた。
菊屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
根付
(
ねつけ
)
とかますとが、十文字の鞘で支えられたのだから、ちょうどいいあんばいにひっかかったのではあったけれども、それが大事の槍であったから、槍持の
奴
(
やっこ
)
は
嚇
(
かっ
)
としました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ぐしゃっと、顔がぬかるみへ埋まったとき、彼は屈辱と怒りのために
嚇
(
かっ
)
となった。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お松は胸が
噪
(
さわ
)
いで、気が
嚇
(
かっ
)
と
逆上
(
のぼせ
)
るようであります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
代二郎がそうだと答えると、彼は
嚇
(
かっ
)
となって、ちょっと
吃
(
ども
)
りながら叫んだ。
初夜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お角は
嚇
(
かっ
)
と怒りました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「てめえおれを笑うのか」男は
辱
(
はずか
)
しめられでもしたように
嚇
(
かっ
)
となった
暴風雨の中
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お浜は
嚇
(
かっ
)
となり
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
嚇
常用漢字
中学
部首:⼝
17画
“嚇”を含む語句
威嚇
嚇々
嚇怒
威嚇的
脅嚇
畏嚇
嚇迫
大威嚇
嚇然
威嚇射撃
威嚇性
一嚇
恐嚇
犬嚇
猪嚇
畏嚇法
白痴嚇
脅嚇手段
鬼嚇