なげ)” の例文
「もし魯粛ろしゅくが、例の問題を持出して、荊州のことを云い出したら、君には、声を放って、おなげきになられたがよいでしょう」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左門慌忙あわてとどめんとすれば、陰風いんぷうまなこくらみて行方ゆくへをしらず。俯向うつぶしにつまづき倒れたるままに、声を放ちて大いになげく。
ちらと輝いた曙光は一まず消えてヨブはまたもとなげきに入ったのである。さわれ曙光はたしかに現われたのである。これ見逃すべからざる点である。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
彼の絶望と落胆は際限が無かった。久しぶりにうちかえって、何の愉快もなく、飯も喰わずに唯なげいた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ある若き牧牛人蛇山オツエザールの辺に狩りし、友におくれてひとり行く、途上美しき処女が路を失うていたくなげくにい、自分の馬に同乗させてその示す方へ送り往く内、象牙の英語で相惚アイボレーと来た。
倉皇として奔命し、迫害の中に、飢えと孤独を忍び、しかも真理のとげ難き嘆きと、共存同悲のあわれみの愛のためになげきつつ一生を生きるのである。「日蓮は涙流さぬ日はなし」と彼はいった。
たま姫樣ひめさま御出生ごしつしやうきもへず、るやさくらむなしくなりぬるを、何處いづくりてか六三ろくさ天地てんちなげきて、ひめいのちゆゑばかりみじかきちぎりにあさましき宿世しゆくせおもへば、一人ひとりのこりてなんとせん
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
イエス彼女のなげきと、彼女と共に来りしユダヤびとの泣くを見て、心を痛ましめ身震いて言いけるは、なんじいずこに彼を置きしや? 彼ら言いけるは、主よ、来りて見たまえ。イエス涙を流し給えり。
なげくこと能はざりしを。
偏奇館吟草 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
命に接するや孔明は天を仰いで大いになげき、落涙長嘆してやまなかったという。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
故に彼は十三節以下においてまたつぶやきとなげきとに入るのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
そしてさし昇る月を仰いで独りなげいた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)