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古參
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こさん
ば吉兵衞と改め
出精して奉公しける程に
利發者なれば物の用に立事
古參の者に
増りければ程なく
番頭三人の中にて
吉兵衞には一番
上席となり毎日々々
細川家の
御館へ參り御用を
彼は
彼此は
此と
陰になりてのお
指圖に
古參の
婢女も
侮どらず
明日の
我れ
忘れし
樣な
樂な
身になりたるは
孃さまの
御情一
ツなり
此御恩何として
送るべき
彼の
君さまに
廻り
逢はゞ
二人共々心を
愛し
古參の私し共は
除者の如くに致し
家政を亂し候に付山口惣右衞門は
餘りに見兼て
諫め候を
殊の外
憤ほり
直樣永の
暇を申付其後
新參の家來を相手に藤五郎藤三郎共を
害せんとの
密談致候を
贔屓し御用も追々多くなり今は
利兵衞方にても吉兵衞なくては
叶はぬ樣に相成けり
然共吉兵衞は少も
高ぶらず
傍輩中も
睦しく
古參の者へは
別して
親みける故
内外共に
評判よく利兵衞が
喜び大方ならず
無二者と思ひけり
然に吉兵衞は
熟々思案するに
最早紀州を