原町はらまち)” の例文
それがそうだと聞かされると同時に三年前の赤ん坊の顔と東京の原町はらまちの生活が実に電光のように脳裏にひらめいたのであった。
庭の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
翌朝あけに成ると皆々打寄り届書とゞけがきを書いたり、是から原町はらまちの警察署へ訴える手続が宜かろうかなどとゴタ/″\致して居りまする処へ這入って来ましたのは
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
氷川神社ひかはじんじや石段いしだんしたにてをがみ、此宮このみや植物園しよくぶつゑん竹藪たけやぶとのあひださかのぼりて原町はらまちかゝれり。みち彼方あなた名代なだい護謨ごむ製造所せいざうしよのあるあり。職人しよくにん眞黒まつくろになつてはたらく。護謨ごむにほひおもてつ。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
無實むじつに殺させん事不便ふびんなりとて我と名乘なのり奉行所ぶぎやうしよいで火付ひつけ十三ヶしよ人殺ひとごろしにん夜盜かずれず其中そのうち麻布あさぶ原町はらまち質屋しちや這入はい金子きんす八十りやう代物しろもの二十五しなぬすみよし白状はくじやうに及びしかば大岡殿おほをかどの八を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
故郷くにの父親が病気になったと云う電報を遅く受取って、牛込うしごめ天神町てんじんちょうへ往き、もう寝ていた先輩を起して旅費を借り、小石川こいしかわ原町はらまちの下宿へ帰るつもりで、十二時近くなって大日坂だいにちざかまで来たところで
指環 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
池田の屋敷は小石川原町はらまちにあって、二百五十石の小普請組こぶしんぐみである。自分はその隣り屋敷へ出入りしているが、池田の屋敷は当主のほかに大勢の厄介やっかいがあって、その内証はよほど逼迫ひっぱくしているらしい。
国家老を引出しましたのは市ヶ谷原町はらまちのお出入町人秋田屋清左衞門あきたやせいざえもんという者の別荘が橋場はしばにあります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)