危急ききゅう)” の例文
しかし、ごらんなさい、われらの名探偵は、この危急ききゅうにさいしても、やっぱりあのほがらかな笑顔をつづけているではありませんか。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
北条屋ほうじょうやを救った甚内じんないは、わたしたち一家の恩人です。わたしは甚内の身に危急ききゅうがあれば、たとえ命はなげうっても、恩に報いたいと決心しました。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
形勢けいせいきゅうなるは、幕末の時にしてらに急なるその内乱ないらん危急ききゅうの場合に際し、外国人の挙動きょどうは如何というに、はなは平気へいきにして干渉かんしょうなどの様子ようすなきのみならず
「かかる姿をしているからとて疑うな、がその梅雪にちがいないのじゃ、そちが一生の出世しゅっせつるは、いまとせまったわしの危急ききゅうすくってくれることにあるぞ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いろいろ危急ききゅうなことがかさなっています。そしてまず第一に、玄王げんおうのことをさぐりださねばなりません。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
青軍せいぐん危急ききゅうを救うべく、敵前てきぜんおいて危険きわまる低空の急旋転きゅうせんてんを行いたるところ、折柄おりから洋上には密雲のために陽光暗く、加うるに霧やや濃く、僚機との連絡至難となり
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
れば当時積弱せきじゃくの幕府に勝算しょうさんなきは我輩わがはいも勝氏とともにこれを知るといえども、士風維持の一方より論ずるときは、国家存亡そんぼう危急ききゅうせまりて勝算の有無うむは言うべき限りにあらず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そうした人間の美しさを素直に受け入れないならば、戦野に於ける破倫はりんを彼は憎むわけには行かない筈であった。実際彼には、両方とも此んな危急ききゅうの状況にあってはむなしい営みに見えた。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
この時もいたく胸騒むなさわぎして、平生へいぜい魔除まよけとして危急ききゅうの時のために用意したる黄金おうごんたまを取り出し、これによもぎを巻きつけて打ち放したれど、鹿はなお動かず、あまり怪しければ近よりて見るに
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「一こくも時をあらそう危急ききゅうのばあいだ。暗くなったらすぐ出発しよう」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
伝吉は平四郎に追われながら、父のいる山畠やまばたへ逃げのぼった。父の伝三はたった一人ひとり山畠の桑の手入れをしていた。が、子供の危急ききゅうを知ると、いもの穴の中へ伝吉を隠した。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
小幡民部こばたみんぶをはじめそのほかの人たちが、とおく三方みかたはらまで伊那丸いなまる危急ききゅうすくいにかけつけているだいじな留守るす! その留守のあいだは、味方みかた武士ぶしがこめている砦とはいえ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれは、この危急ききゅうのばあいに、おちつきはらって、ニヤニヤ笑いだしたのです。そして、大きなてのひらで、小林少年の頭を、さもかわいいといわぬばかりに、なでているのです。
怪奇四十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
夜の明けるまで飜訳したが、れはマアどうなる事だろうか、大変な事だとひそかに心配した所が、その翌々二十一日には将軍が危急ききゅう存亡の大事を眼前がんぜんに見ながられをてゝおいて上洛して仕舞しまうた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
このたびみやこへまいったのは、まず何よりもお父上の危急ききゅうをおすくい申すにあった。いまここに、その駕籠かごを迎えまいらせた以上、呂宋兵衛るそんべえを討つのは、いまにかぎったことではない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
賊たちは、この危急ききゅうのばあいに、何を思ったのか、声をそろえて笑いだしたのです。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そののちの事は話さずとも、あなたには推察出来るでしょう。わたしは北条屋ほうじょうや危急ききゅうを救うために、三日と云う日限にちげんを一日も違えず、六千貫のかねを調達する、恩返しの約束を結んだのです。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)