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十徳
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じっとく
ふりがな文庫
“
十徳
(
じっとく
)” の例文
宗十頭巾に
十徳
(
じっとく
)
姿、
顎鬚
(
あごひげ
)
白い、
好々爺
(
こうこうや
)
然とした
落語家
(
はなしか
)
仲間のお稽古番、
桂
(
かつら
)
かん治爺さんの姿が、ヒョロヒョロと目の前に見えてきた。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
それに対したのが気軽そうな
宗匠振
(
そうじょうぶり
)
。
朽色
(
くちいろ
)
の麻の衣服に、
黒絽
(
くろろ
)
の
十徳
(
じっとく
)
を、これも脱いで、矢張飛ばぬ様に
瓢箪
(
ひょうたん
)
を
重石
(
おもし
)
に据えていた。
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
頃は元禄十四年
師走
(
しわす
)
半ばの十四日に宝井
其角
(
きかく
)
が着ていたような妙ちきりんな
十徳
(
じっとく
)
みたいなものを引っ掛けて私にネラわれているとも知らず
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
従来の説明を一挙に
覆
(
くつがえ
)
したのは、
宗匠頭巾
(
そうしょうずきん
)
をかぶって、
十徳
(
じっとく
)
を着た背の高い老人。やや離れたところに立っておりました。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
亭主役の信長は、いつのまにか衣服もかえて、簡素な
十徳
(
じっとく
)
を着ていた。陰の水屋には
宗易
(
そうえき
)
の心くばりがはたらいている。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
真にまたと見ることの出来ぬと思われるほどの思いつきで、赤や
浅黄
(
あさぎ
)
の
無垢
(
むく
)
を重ね、上に
十徳
(
じっとく
)
を着たお
坊主
(
ぼうず
)
までついて、銀の道具のお茶所まで従がっていった。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
きいた風な若旦那は
俳諧師
(
はいかいし
)
らしい
十徳
(
じっとく
)
姿の老人と連れ立ち、
角隠
(
つのかく
)
しに日傘を
翳
(
かざ
)
した
上
(
うわ
)
つ
方
(
かた
)
の御女中はちょこちょこ走りの
虚無僧下駄
(
こむそうげた
)
に
小褄
(
こづま
)
を取った芸者と
行交
(
ゆきちが
)
えば
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
……利休茶の
十徳
(
じっとく
)
宗匠頭巾、
瀟洒
(
しょうしゃ
)
とした好男子、それにご用心なさいませ。それが陶器師でございます。……非常な腕利き、ただ一刀に、
項
(
うなじ
)
を斬るそうでございます。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
振り返ってみると、
十徳
(
じっとく
)
を着た
白髪
(
しらが
)
の、品のいい老人が、
柾木
(
まさき
)
の生垣の中からこっちを見ていた。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
一人の
宗匠頭巾
(
そうしょうずきん
)
の、でっぷりした、黒い
十徳
(
じっとく
)
すがたの老人と、それに並んで、いくらか、身を
退
(
しざ
)
らせている、限りなく
艶麗
(
えんれい
)
な、文金島田の紫勝ちないでたちの女性とを見る。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
店の人たちも三人
一斉
(
いっとき
)
に礼をしたが、十鉢ばかり、その見事な菊を並べた、ほとんど菊の中に
彳
(
たたず
)
んで、ほたりと笑いながら同じく一礼した、
十徳
(
じっとく
)
を着そうな、隠居頭の柔和な老人が見えた。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
昔の人が
十徳
(
じっとく
)
にでも着そうな
石摺
(
いしず
)
りの羽織をぼってりと着込んで、
風通大嶋
(
ふうつうおおしま
)
の
袷
(
あわせ
)
の下に黄八丈の下着を見せ、袂の中から
升
(
ます
)
のしきりへ
肘
(
ひじ
)
をついている左の腕をそのまま背中へ廻しているので
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
頭に
宗匠頭巾
(
そうしょうずきん
)
のようなものをいただき、身には
十徳
(
じっとく
)
を着ていましたが、侍が一人ついて、村人らしいのを二人ばかり連れて来て、お墓の掃除をさせている。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
店者風
(
たなものふう
)
の
由造
(
よしぞう
)
、
東条隼人
(
とうじょうはやと
)
と呼ばれる侍、
十徳
(
じっとく
)
の老人、
為
(
ため
)
という若者、それに
甲比丹
(
かぴたん
)
の三次、中でも三次は、
潮焦
(
しおや
)
けのした皮膚に眼の鋭いところ
隼
(
はやぶさ
)
という感じがする。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
利休茶の
十徳
(
じっとく
)
を纏っていた。そうして右手にドンヨリと光る、抜き身をダラリと下げていた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
黒の
十徳
(
じっとく
)
に、
黄八丈
(
きはちじょう
)
の着付け、紫
綸子
(
りんず
)
の厚い
褥
(
しとね
)
の上に坐って、
左手
(
ゆんで
)
の
掌
(
たなそこ
)
に、処女の血のように真赤に透き通る、
径
(
わたり
)
五分程の、
燦
(
きら
)
めく
珠玉
(
たま
)
を乗せて、明るい灯火にかざすように、ためつ、すがめつ
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
十徳
(
じっとく
)
を着た、坊主頭の、かなりの年配な、品のよい人が不意に姿を現わし、障子をあける音もなしに入って来たから、眼の見えない按摩のほかは、
新造
(
しんぞ
)
も
禿
(
かむろ
)
も一度に狼狽して
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
朦朧
(
もうろう
)
と月光に
暉
(
かがや
)
かされながら一人の男が現れ出た。頭巾を
戴
(
いただ
)
き
十徳
(
じっとく
)
を着た、放心したような男であった。その男は静々と——獲物を狙う悪獣のように、光明優婆塞へ近寄った。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
十
常用漢字
小1
部首:⼗
2画
徳
常用漢字
小4
部首:⼻
14画
“十徳”で始まる語句
十徳姿