勢子せこ)” の例文
そこには、すでに従者食客など数十人が、旗をささげ、たかをすえ、また狩犬をつれ、手には槍、勢子せこ棒などを持って勢揃いしていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
畔道に三十間ばかりずつ間隔を置いて、勢子せこの四人は立ったのである。そこで、また帰ってきた親蜂に斜酣は真綿をくわえさせた。
採峰徘菌愚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
はいって来た七人の男は、みんな伯爵の狩のお供をする勢子せこの面々で、手に手に分銅のついた棍棒だの、長い鞭だのをもち、腰帯には犬綱をさげています。
まわりには居候や、犬や、犬飼いや、勢子せこなどが居並んでいるが、みんな馬に乗っている。ぐるりには、召し使いどもが見せしめのために呼び集められている。
親分に内緒で勢子せこの一人に加はつたのは宜いが、獲物が親分の羽掻はがいの下に逃げ込んで、うつかり知らずに居る錢形平次の家へ、家搜しの一隊が乘込むやうな事になつては
自分の考えでは鹿飼は勢子せこのことで、しかもその住地はすなわち一の狩集まりであったから、シシタマリと呼びまた鹿飼とも呼んだのを後に二つの名が合体したのであろう。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
分別ふんべつをするから、つぶてつたり、煙管きせる雁首がんくび引拂ひつぱらふなど、いまやうな陣笠ぢんがさ勢子せこわざ振舞ふるまはぬ、大將たいしやうもつぱ寛仁大度くわんにんたいどことと、すなは黒猫くろねこを、ト御新造ごしんぞこゑ内證ないしよう眞似まね
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
虎に殺され損った勢子せこを足で蹴返していまいましげに見下した彼以外の誰の眼付だろうか。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
したがってその家老めら、取りまき家臣ら、猟り役人、勢子せこの末にいたるまで、役徳顔におんなをあらしまわり、田万里の村じゅう、老婆のほかは、ひとりとして逃れたものはござらぬ。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
空気は香り高く、森は赤と鳶色の光に輝き、勢子せこのどよめき、鋭い銃声は新鮮な自由の歓びに充ち溢れていた。ドリアンは気も軽々とモンマウス公爵夫人の弟のジョフレイと並んで進んだ。
吾か勢子せこはいつくくらんおき津ものなはりのやまを気布けふか古ゆらん
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
勢子せこの姿が見えないとは何んとしても不思議のことではある」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
つち下界げかいにやらはれて、勢子せこの叫に煩へば
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「此方は、荊州九軍の大将軍、また明日は、大宴に続いて、国中の武士を寄せ、狩猟かりを催すことになっておる。大兵はその勢子せこだ。何の不審があるか」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五六人の勢子せこが——猟師と勢子とは同じような恰好かっこうをしていて、見分け難いのだが、私は趙の注意によって、彼等の持っている銃の大小でそれを区別することが出来た——私達について表へ出た。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「親分が顔を出しゃ一ぺんに露見するが、あっしなら大丈夫で。幸い植幸うえこう離屋はなれを足場にすることになっていますが、植幸の親爺は長い間の懇意だから、何とか誤魔化して勢子せこに入れてくれますよ」
つち下界げかいにやらはれて、勢子せこの叫に煩へば
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
が、彼はそのまま船手をとくして中ノ島、西島、知夫里ちぶりなどの浦々をめぐり、島前どうぜん各地の浜番所の勢子せこ
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まるで勢子せこだね、親分」
かくて御料の猟場かりばに着くと、許田きょでん二百余里(支那里)のあいだを、十万の勢子せこでかこみ、天子は、彫弓ちょうきゅう金鈚箭きんひせんを御手に、駒を野に立てられ、玄徳をかえりみてのたもうた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まるで勢子せこだね、親分」
と称して、鷹狩と触れてはいたが、その狩衣かりぎぬをかなぐり捨て、その将士の勢子せこ矢弾やだまを命じて
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、まるでわれら明智の一勢を、猪鹿しししかを追う勢子せこ猟犬いぬのように見ての陣沙汰じんざた。どうしてこの気持のまま戦場へ赴かれるものぞ。これこそあのじゃじゃ馬殿の恐るべき例の策智はかりごと
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呉の大将潘璋はんしょうの伏勢が、松明たいまつを投げて、彼の前後をはばみ、いよいよ関羽が孤立して、そこに進退きわまっていることを確かめると、一斉に鼓を打ち鉦を鳴らし、獣王を狩り立てている勢子せこのように
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)