切端きれはし)” の例文
扉の方へうしろ向けに、おおき賽銭箱さいせんばこのこなた、薬研やげんのような破目われめの入った丸柱まるばしらながめた時、一枚懐紙かいし切端きれはしに、すらすらとした女文字おんなもじ
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
マッチの棒、鼻緒の切端きれはし藁切わらきれなど……その中に煙草の吸殻らしいものが一個、平べったく粘り付いているのが眼に付いた。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
セエラは、あの銀貨に工夫して穴をあけ、細いリボンの切端きれはしを穴に通して、首に掛けました。セエラは、大屋敷がだんだん好きになりました。
ごろでは綿わたがすつかりれなくなつたので、まるめばこすゝけたまゝまれ保存ほぞんされてるのも絲屑いとくづぬの切端きれはしれてあるくらゐぎないのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それは、雨水あまみずと泥で汚れた用箋の切端きれはしだったが、それには黒インクで、次のような独逸ドイツ文がしたためられてあった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
君達は船材の切端きれはしが、長いあいだ波にもまれて、藤壺が一杯くっついて、とうとうしまいに、深い深い海の底から打上げられたのかと思われるような風になって
やはり赤い布と鈴とをつけ、小さな風呂敷包ふろしきづつみを持っていました。そして村の家の前で踊ってみせました。がこんどは、風呂敷から野菜の切端きれはしを取り出して、それをくれと言うようなんです。
キンショキショキ (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
勿体なくも市内第一流の桃色ローマンスの糸の切端きれはしがコンナ処に落込んでいようなんて誰が想像し得よう。ず一息入れて落付いてみる事だ。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
勘次かんじはふいとしてしばらつてかへつてときにはしろ曝木綿さらしもめん古新聞紙ふるしんぶんがみ切端きれはしつゝんだのをつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
二人が別々に書いたノートの切端きれはしを、瘠せ細ったレミヤの両手に渡しますと、レミヤは未だスッカリ読んでしまわぬうちに涙を一パイに湛えました。
霊感! (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それは金口きんぐち巻煙草まきたばこの吸いさしを、短かい銅線の切端きれはしの折れ曲りに挟んで、根元まで吸い上げた残りであった。
老巡査 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
船長、一等運転手、賄長まかないちょう、屈強の水夫、火夫、等々々、只、機関長だけは居なかったようである。皆、手に手にピストルだの、スパナだの、ロープの切端きれはしだのを持っていた。
幽霊と推進機 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そうしてね、あんまり可哀そうですから、頂き残りの御飯粒で、モト通りに貼ってやりましょうと思ったついでに、何の気も無しに、その切端きれはしの新聞記事を読んでみたらビックリしちゃったの。
狂人は笑う (新字新仮名) / 夢野久作(著)