ひやゝか)” の例文
樹の枝がしば/″\車の幌に觸れる。車は既に山腹を削つた岨道を攀ぢて行くのである。空氣の澄渡つてひやゝかなことが際立つて感じられて來る。
十年振:一名京都紀行 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
「それぢや、これからもう、家が淋しいのひやゝかだのと有仰おつしやらないで下さいまし。無能力な動物に何も出來やう筈がございませんわ。」
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
公子夫婦の心ひやゝかなる、既に好き聽衆とすべきならぬに、今又此毒舌の翁を獲つ。我が本讀の前兆ははなはだ佳ならざるが如くなりき。
十八日に新嘉坡シンガポウルで、二十三日に香港ホンコンさふらふ迄また私は甲板かふばんのぞかんともせずさふらひき。気候は次第にひやゝかになりセルさへかろきに過ぐる心地するもありさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
だれです、あなたは。」とひやゝかで。わたしこんなのをきくとすつきりする、のさきにえるくわママないものに、みづをぶつかけて、天窓あたまからあらつておやんなさるので、いつでもかうだ、きはめていゝ。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
有仰おつしやれば、女だツて仍且やつぱりうでございませうよ。出來る事ならひとりでゐた方が幾ら氣樂きらくだか知れやしません。」とひやゝかにいふ。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
我はこれを受くるとき、畫工の手の氷の如くひやゝかになりて、いたく震ひたるに心づきぬ。我はいよ/\騷ぎ出し、母を呼びてます/\泣きぬ。
あはれ此夢いつかはめん、醒めてこの怖るべき形相ぎやうさうは消えほろびなん。心を鎭めて目を閉づれば、ひやゝかなる山おろしの風は我頬をめぐりて吹けり。
「此の猫だツて、誰かに可愛がられて、鼠を踏んまへてうなツたことがあるのだ……ふゝゝゝ。」と無意味に、ひやゝかに笑ツて
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「フン、女のくせに二合もけりや豪儀がうぎだゼ。」とお房はひやゝかに謂ツて、些と傍を向き、「だツて、一月ひとつき儉約けんやくして御覧ごらんなさいな、チヤンと反物たんものが一たんへますとさ。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
とブツ/\いふ。其の態度が奈何いかにもひやゝかで、ふこともキチンと條理でうりが立ツてゐる。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
雪はあがツて、灰色の空は雲切がして、ひやゝかな日光が薄ツすりと射す。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ると、風早學士は、ひやゝかに笑ツて
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)