作用はたらき)” の例文
そは神と人との間に契約を結ぶにあたりては、わがいふ如く貴きこの寶犧牲いけにへとなり、かつかくなるも己が作用はたらきによればなり 二八—三〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
鋭敏えいびん作用はたらきをすることがある………たとへば何か待焦まちこがれてゐて、つい齒痒はがゆくなツて、ヂリ/″\してならぬと謂ツた風にさわぎ出す。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
三十分ばかり話してから歸つて行つた此の若い母親と色白の男の赤ん坊とは、老孃達の上に通り魔のやうな不思議な作用はたらきを殘して行つた。
かめれおん日記 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
いったい、この認識の作用はたらきというものは、「根」と「境」と「識」との三つが、相応じ、一致しなければ、起こらないものです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
余にはこの翁ただ何者をか秘めいてたれ一人開くことかなわぬ箱のごとき思いす。こはがいつもの怪しきこころ作用はたらきなるべきか。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
氣息の義即ち氣なりとしては意を失ふので、それらの氣の義は、人の心の或作用はたらきを爲すものと見、包含量の甚だ多い語として見るが至當である。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
これ程の恐ろしい作用はたらきを現わした愛子の、何も知らないでオドオドしている近眼を暫くの間茫然と見詰めていたね。
近眼芸妓と迷宮事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それにおびえでもしているかのように、彼女はいつまでも私の手をはなさないでいた。そうして目をつぶったまま、自分のうちの何かの作用はたらきに一心になろうとしているように見えた。
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「ええ話しましょう」とすぐ乗気な返事をしたが、活溌かっぱつなのはただ返事だけで、挙動の方は緩慢かんまんというよりも、すべての筋肉が湯にでられた結果、当分作用はたらきを中止している姿であった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
燐薬の作用はたらきで、一まわりを経ている死人がまるで生きているように新鮮あざやかだったことなぞも、平兵衛はてんから気に留めなかったが、庭の隅を掘って屍の残部のこりを埋めるだけの用心は忘れなかった。
白いものの極は畢竟ひっきょう、黒いものと同じ作用はたらきを為すものです。大雪の時は暗夜の時と同じように咫尺しせきを弁ぜぬことになります。この降り塩梅あんばいでは大雪になると、誰もそう思わぬものはありません。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
なほその作用はたらきをとゞめず、この物動きかつ感ずること海の菌の如きにいたれば、さらに己を種として諸〻の力を組立てはじむ 五五—五七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
広縁識こうえんじき」といわれておりますが、現在だけでなく、過去のこと、将来のことまでも、いろいろ思い考えるのは皆この第六意識の作用はたらきです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
これによって文字の霊の人間に対する作用はたらきを明らかにしようというのである。さて、こうして、おかしな統計が出来上った。
文字禍 (新字新仮名) / 中島敦(著)
自ら欺けるをかれはいつしか知りたれど、すでに一度自ら欺きし人はいかにこれを思い付くともかいなく、かえってこれを自ら誇らんとするが人のこころの怪しき作用はたらきの一つなり。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
だから吾が妻ながら時折は薄気味の悪い事や、うるさい事もないではなかったが、しかし、そうした妻の頭の作用はたらきに就いて私が内心すくなからず鬼胎おそれいだいていた事は事実であった。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
諸〻の願ひまたはその他の情の我等に作用はたらきを及ぼすにしたがひ、影も亦姿を異にす、是ぞ汝のあやしとする事の原因もとなる。 一〇六—一〇八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
それゆえに、この「勝義根」と「扶塵根」、つまり「視神経」と「眼球」との二つが、そろって完全であってこそ、はじめて私どもの眼は、眼の作用はたらきをするわけです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
おもうに、なんじ観想かんそうによって救わるべくもないがゆえに、これよりのちは、一切の思念をて、ただただ身を働かすことによってみずからを救おうと心がけるがよい。時とは人の作用はたらきいいじゃ。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
目の能くこれに教ふるをまたず、たゞ彼よりいづるしき力によりて、昔の愛がその大いなる作用はたらきを起すを覺えき 三七—三九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
我はくすしき物ありてわが目をこれにけるところに着きゐたり、是においてかわが心の作用はたらきをすべて知れる淑女 二五—二七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
汝等の才にむかひてはかくして語らざるをえず、そは汝等の才は、のち智に照らすにいたる物をもたゞ官能の作用はたらきによりてればなり 四〇—四二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)