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よりかゝり
アンドレイ、エヒミチはうんざりして、
長椅子の
上に
横になり、
倚掛の
方へ
突と
顏を
向けた
儘、
齒を
切つて、
友の
喋喋語るのを
詮方なく
聞いてゐる。
時計が
鳴る。アンドレイ、エヒミチは
椅子の
倚掛に
身を
投げて、
眼を
閉ぢて
考へる。
而して
今讀んだ
書物の
中の
面白い
影響で、
自分の
過去と、
現在とに
思を
及すのであつた。
先に——七
里半の
峠を
越さうとして
下りた
一見の
知己が
居た、
椅子の
間を
向うへ
隔てて、
彼と
同じ
側の
一隅に、
薄青い
天鵝絨の
凭掛を
枕にして、
隧道を
越す
以前から、
夜の
底に
沈んだやうに