-
トップ
>
-
こゝろがか
埋め何知ぬ體に居間へ
立戻り居る所へ三人も歸來り
首尾よく地獄谷へ突落せし體を
告囁けば天忠は
點頭て拙僧も各々の留主に斯樣々々に
計ひたれば最早
心懸りはなし
然ばとて
大望の
密談を
「サ、それが、お嬢様、何となく
心懸りなので御座います」
宜敷
御廻り下さるべし是のみ
心懸り故
縁者同樣の
貴殿なれば此事頼み置なり
又妻子のことも
宜くお
世話下されよと
遺言なし夫より
悴吉三郎に向ひ利兵衞殿
娘お菊は
其方と
胎内より
云號せしに付利兵衞殿を
越前守少しも
臆せず左樣に候はゞ是非に及ばず天一坊儀に
付少々御密談申上度存じ
態々推參仕つり候
御聞屆無に於ては致し方なし然れば
御暇仕つらんと
立懸るに伊豆守殿天一坊の事と
聞て何事やらんと
心懸りなれば
言葉を
私の
臨終の
知らせなんでせうから、すぐに
心掛りのないやうに、
遺言の
眞似ごとだけもしませうと、
果敢いんですわねえ……
唯そればかりを
的のやうにして
目を
睜つて
居たんですよ。
祝し奉つれり奧方
看病のため
國元へいらせられ
若君誕生にては
公儀へ對し
憚りありとて
内々にて
養育のおぼし
召なりまた大納言光貞卿は
當年四十一歳にあたり
若君誕生なれば四十二の二ツ子なり
何なる事にや
昔しより
忌きらふ事ゆゑ光貞卿にも
心掛りに
思召ある日
家老加納將監を