麒麟児きりんじ)” の例文
加藤清正に懇望こんもうされて肥後へ高禄でよばれて行った麒麟児きりんじ兵庫利厳ひょうごとしとしなどという「偉大なるかわず」をたくさんに時勢の中へ送っている。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わが竹本綾之助たけもとあやのすけ、そのひともその約束をもって、しかも天才麒麟児きりんじとして、その上に美貌びぼうをもって生れた。私は綾之助を幸福者だと思う。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
従而したがって、やがて後年ひとたび真実の形にはいると、全身をもって物の真底にふれ懊悩おうのうしだした麒麟児きりんじの姿がハッキリ分るように思うのである。
又五郎は初めから信近にてすじのよさを認められ、十八のときには近恒という号を貰って、塾ちゅうの麒麟児きりんじなどといわれた。
おれの女房 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
飲んだくれの父の子に麒麟児きりんじい立ち、人格者のむすこにのらくらができあがるのも、あるいはこのへんの消息を物語るのかもしれない。
沓掛より (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
麒麟児きりんじといわれて十四の歳から新日本音楽の権威である千歳の父のもとに引取られ、厳しく仕込まれた慶四郎は、青年になるにしたがってめざましく技倆を上げた。
呼ばれし乙女 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
九州の麒麟児きりんじとよばれるこの天才少年にかかっては、城代も家老もさながら赤子あかごにもひとしい存在です。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
漣は紅葉美妙と並んで第一号から小説を載せ、硯友社の麒麟児きりんじたる才鋒さいほうを早くから現わしていた。
竜駿りゅうしゅんはいないか。麒麟児きりんじはいないか。もうはや、そのような期待には全くほとほと御免である。
彼は昔の彼ならず (新字新仮名) / 太宰治(著)
夢酔道人の丹精むなしからず、あっぱれ幕府旗下の麒麟児きりんじとして、徳川の興亡を肩にかけて起つ人となり、ここに、受爵の恩命が伝わること偶然ならずと言わなければなりません。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「武道の麒麟児きりんじと思ったに葉之助殿はお人好しだそうだ」「食わせ物だ食わせ物だ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
大阪では子役中の麒麟児きりんじと呼ばれ、鴈治郎がんじろうですらも彼に食われるとかいう噂であったが、初上はつのぼりのせいか、曾我の対面の鬼王と鞘当さやあて留女とめおんなの二役だけで、格別の注意をひかなかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しまれるような麒麟児きりんじに限ったこと
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そして忠利に至って、祖父が宗門の麒麟児きりんじとして愛し、父が心友として相許す沢庵に、道の師として畢生ひっせいの敬慕を捧げたのは当然というべきである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも左近将監のいいふらしたうわさ——九州の麒麟児きりんじといわれる碁の天才小金吾を、左近将監がやぶったばかりに、小金吾はその身をはじて、修業していっそう腕をみがかんものと
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
ああ、この周到なる未来の成功の麒麟児きりんじを呼んで、「のろま」とは誰がつけた?
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
武州入間郡いるまごおり川越の城主、松平大和守十五万石、その藩中で五百石を領した、神陰しんかげ流の剣道指南役、秋山要左衛門勝重の次男で、十五歳の時には父勝重を、ぶんなぐったという麒麟児きりんじであり
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
映画は芸術と科学との結婚によって生まれた麒麟児きりんじである。
映画芸術 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
子の姜維も天才というのでしょうか、年十五、六のときにはもう郷党の学者でも古老でも、彼の才識には、舌を巻いて、冀城きじょう麒麟児きりんじだといっていたほどですよ
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは素晴らしい麒麟児きりんじだ。まるで鬼神でもいていて言語行動させるようだ……ははあ、それで弓之進め、この少年の行末ゆくすえを案じ、朋輩先輩の嫉視しっしを恐れ、にわ白痴ばかを気取らせたのであろう。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「やよ、江東の麒麟児きりんじ、なにをためらうことがあろう。父業を継いで起ち給え。不肖ながらまず第一にわが部下の兵百余人をつれて、真っ先に力をそえ申そう」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
範宴はんえん少納言とやら、どんな天才か、麒麟児きりんじかしらぬが、そもそも、授戒入壇じゅかいにゅうだんのことは、円頓菩薩えんどんぼさつの大戒として、吾々が、この山にあって、十年、二十年の修行をしても
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
加うるに、この黒田家へは、このとき天が麒麟児きりんじをめぐんで、家運いよいよ隆昌りゅうしょうを見せた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こういう、麒麟児きりんじは悪うすると若死をしますでな」と注意した老人もある。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天下の者は豊臣とよとみ徳川とくがわ北条ほうじょう柴田しばたのともがらあるを知って、武田菱たけだびしはたじるしを、とうの昔にわすれているが——いやじぶんもそうだったが——こいつは大きな見当けんとうちがい、あの麒麟児きりんじ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのころすでにおん身は、範宴はんえん少納言といわれ、北嶺ほくれい麒麟児きりんじの聞えたかく、若くして、聖光院しょうこういんの門跡となってゆくのを見、ねじけ者のおれは、いよいよ、陰に陽に、おん身を呪詛じゅそしはじめた
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いったい、この小次郎という者は、鐘巻自斎の手許で、子飼いからの修行を受けている頃から、もう、鬼才だとか、麒麟児きりんじだとかいわれていただけに、普通の人とは、まるで剣のたちが変っていた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柳生とならび称されて、一刀流の全盛を見、老来やや人生に安んじているまに、社会の後からはもう、こんな麒麟児きりんじが生れつつあったのか——と、大きな驚きをもって、小次郎を見たものであった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おおっ、わしの家からまたも、この麒麟児きりんじが生れ出たか」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「彼は、親まさりである。江東の麒麟児きりんじとは、彼であろう」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これは麒麟児きりんじだ」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(岩国の麒麟児きりんじ
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(岩国の麒麟児きりんじ
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)