風波ふうは)” の例文
決して風波ふうはを起させないと云うのは、畢竟ひっきょう養父母と養子との間柄あいだがらの悪いのは養子の方の不行届ふゆきとどきだと説を極めてたのでしょう。所が私は正反対で
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
最初から海の事をよく知っていて今日は穏だがもし途中で風が出たらこうして避けると用意して乗出せば少し位の風波ふうはがあっても決して驚かない。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
邸内にすまわせてある長尾の一家いっけにも、折々多少の風波ふうはが起る。そうすると必ず五百いおが調停にかなくてはならなかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
彼は一場いちじょう風波ふうはが彼にもたらしたこの自信を抱いてひそかに喜こんだ。今までの彼は、お延に対するごとに、苦手にがての感をどこかに起さずにいられた事がなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで彼女は、どうかして住職を負かしたいと思って、熱心に研究しながら毎日寺へ通うようになった。時によると朝出かけて夜遅くまで帰らないことがあって、家庭に風波ふうはが起った。
法華僧の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
風波ふうはおかして大洋を渡りなど遊ばして苦心をなすったから、只今では仮令たといお役所へお出で遊ばさないでも、年金を沢山お取り遊ばすというのも、その苦労をなさいましたお徳でございます
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
またこの反対の勢力の風波ふうはに会わなければ、思想も練ることはできない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
あの靄の輪廓りんかくに取り巻かれているあたりには、大船おおぶねに乗って風波ふうはを破ってく大胆な海国かいこくの民の住んでいる町々があるのだ。その船人ふなびとはまだ船のき分けた事のない、沈黙のうしおの上を船で渡るのだ。
西瓜だって胡瓜きゅうりだって末実りは普通より安価あんかであり、ことに時代と身辺しんぺんの変化のせいで、風波ふうはの中にさすらえて来たのであるため父親の立場からいうと、これに対して責任観せきにんかんが深くなるわけである。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
舳櫓ともろ船子ふなこは海上鎮護ちんごの神の御声みこえに気をふるい、やにわにをば立直して、曳々えいえい声をげてしければ、船は難無なんな風波ふうはしのぎて、今は我物なり、大権現だいごんげん冥護みょうごはあるぞ、と船子ふなこはたちまち力を得て
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大槻おおつきせがれなども内々見舞に来て、官軍と賊軍と塾の中で混りあって、朝敵藩の病人を看病して居ながら、何も風波ふうはもなければ苦味にがみもない。ソンナ事が塾の安全であったけでしょう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
人世じんせい風波ふうはは思いもうけぬ方面より起る。小山の妻君熱心に
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
第二百九十二 世の風波ふうは
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)