わなな)” の例文
を合せて、拝むまねをした。天狗さま天狗さまを、呪文じゅもんのように繰返して唱えながら、一人一人の影を拝んで、恐れわななく振りをした。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼らがのんどに氷を与えて苦寒に怖れわななかしめよ、彼らが胆に針を与えて秘密の痛みに堪えざらしめよ、彼らが眼前めさきに彼らがしたる多数おおく奢侈しゃしの子孫を殺して、玩物がんぶつの念を嗟歎さたんの灰の河に埋めよ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
風のぬるみにわななきて
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
権十のおどろきは、最初の驚きの比ではなかった。歯の根も、体もわななくばかりで、勿論、それに対して、否とも応とも、返辞などはできなかった。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その指先も、そのあかい数珠も、かすかにわなないているので、武蔵はこの尼さんがなにをそんなに恐怖しているのかを怪しんだ。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主計頭が、調書をそれへさし出すと、老人は、わななく手に取り上げて、それを、最初の第一項から、血走ッた眼で読み始めた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
母子おやこ、ひしと抱き合っているので、一つの大きなまゆのように見えた。しずかのふところにわなないているのは老母だった。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてもし、それに逆らえば、桃花村は一夜に焼き払われるか、みなごろしの目に遭うであろうとわななくのだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二将は唖然あぜんとした。いや哀しみわなないた。——敵は実数四十万という大軍、わずか二千騎でどうして喰い止められよう。死にに行けというのと同じであると思った。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
郁次郎はわななきながら彼女の中指の爪を見つめた。その爪は、烏のくちばしのように、黒い艶をもっている。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
青眉のあとをわななかせて、今朝奈良を立つことは、生命いのちをすてに立つようなものであるから、二階へかくれて、夜を待って、抜け出したほうがよいと、こうしている間も
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ唇がわなないてしまうだけで、よけいに胸はつまり涙は眼をふさいで、もし、武蔵もそこにいない桜月夜の下でもあるならば、わッ……と大声あげて、嬰児あかごのように泣きまろ
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その唇は白髯につつまれながらややわなないているかに見えた。——けれど相変らず慈愛にみちている眼は、格外の脇に組み敷かれている庖丁人の男の顔を、いたましげに見つめながら
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それともまた、その茶わん屋にわしが丁稚奉公でっちぼうこうしていたあいだ、主人の息子であったその方が、事ごとに、幼いわしをいじめたから、その仕返しを受けはせぬかと、それを恐れてわなないておるのか。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
逆手さかてにつかんでいる脇差のつばが、がたがたとわなないて、板縁いたえんに鳴った。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
糜芳は喪心したように、蒼白になってわなないていたが、やがて
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蘭丸は手をついて、わななきながら、主君のくちもとを見つめた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
露八が、呟くと、ともの蔭でわななきながら、船頭が云った。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主君の命と聞いただけに、わなないて答えるのだった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それだけに、わしは身の恐ろしさにわななく。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「玄徳か……」と、舌をつらせてわなないた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かすかにわなないていたように見られました
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お杉のただ事でないわななごえ
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝家のこぶしは膝にわなないている。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、わななきながら披露ひろうした。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)