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顧
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ふりかへ
勘次が
顧つた
時、
彼を
打棄つた
船は
沈んだ
霧に
隔てられて
見えなかつた。
彼は
蜀黍の
幹に
添うて
足趾に
從つて
遙に
土手の
往來へ
出た。
霧が一
遍に
晴れた。
彼は
心づいた
時俄に
怖れたやうに
内儀さんを
顧つてじやらりと
其の
錢を
財布の
底へ
落した。(完)
おつぎは一
杯を
汲んでひよつと
顧つた
時後の
竹の
林が
強い
北風に
首筋を
壓しつけては
雪を
攫んでぱあつと
投げつけられながら
力の
限は
爭はうとして
苦悶いて
居るのを
見た。