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かみのけ
と
言葉やさしく
愛兒の
房々せる
頭髮に
玉のやうなる
頬をすり
寄せて、
餘念もなく
物語る、これが
夫人の
爲めには、
唯一の
慰であらう。
予に
談ずることも
出來うずれ、このやうに
頭髮を
掻毟って、ま
此樣に
地上に
倒れて、まだ
掘らぬ
墓穴の
尺を
取ることも
出來うずれ!
乃至は
眞夜中に
馬の
鬣を
紛糾らせ、
又は
懶惰女の
頭髮を
滅茶滅茶に
縺れさせて、
解けたら
不幸の
前兆ぢゃ、なぞと
氣を
揉まするもマブが
惡戲。
で、
濱島は
此時最早此船を
去らんとて
私の
手を
握りて
袂別の
言葉厚く、
夫人にも
二言三言云つた
後、その
愛兒をば
右手に
抱き
寄せて、
其房々とした
頭髮を
撫でながら
ロミオ
頭髮を
掻毟り
仰向に
倒れて
歎く。
此時奧にて
戸を
叩く
音。