針鼠はりねずみ)” の例文
右は湖水の三津みつはま、左は叡山延暦寺えいざんえんりゃくじへの登り坂。人々の着ているみのは、吹きおろす風、返す風に、みな針鼠はりねずみのようにそよぎ立った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
机博士はみるみるうちに、全身ぜんしん針鼠はりねずみのようになって、床のうえに倒れ、しばらく七転八倒しちてんばっとうしていたが、やがて、ピッタリ動かなくなった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
見渡みわたかぎり、あいちやんが針鼠はりねずみおくらうとおもところにはすべ畦畝うねがあつて、二れつになつた兵士へいしつねきて、毬投場グラウンド部分々々ぶゝん/\あるいてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
針鼠はりねずみでれば撫でるほど針を立てる。小野さんは、破裂せぬ前にどうかしなければならぬ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
針鼠はりねずみは危険に遭うた時は、敵へ向っては反抗しないで、かえってわが身を縮める。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
武蔵の影はその度に、針鼠はりねずみのように戦気でふくらむかと見えた。眸はたかのように澄みきっている。神経は、髪の毛の先まで働いているのだ。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やが今度こんどは、あいちやんがあたましたへやり、ふたゝはじめやうとすると針鼠はりねずみが、自分じぶん仲間外なかまはづれにしたとつておほいいかり、まさらうとする素振そぶりえました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
針鼠はりねずみのようにとがってるあの兄を、わずかの間に丸め込んだ嫂の手腕にはなおさら敬服した。自分はようやく安心したような顔を、晴々と輝かせた母を見るだけでも満足であった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
漢青年の毛髪は、あまりの恐ろしさのために、まるで針鼠はりねずみのように逆立さかだった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
らんと、みな眼をかがやかし、はやくも、悽愴な気を、眉に、唇に示し合って、針鼠はりねずみのように、体じゅうを硬めていた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがてあいちやんは、何時いつになれば自分じぶんばんだか一かうわけわからぬ此麽こんな競技ゲームてゐるのが莫迦々々ばか/\しくなつてたので、それよりも自分じぶん針鼠はりねずみさがしにきました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
針鼠はりねずみ
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)