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遽
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あわただ
ふりがな文庫
“
遽
(
あわただ
)” の例文
ところが、
遽
(
あわただ
)
しい旅の仕度が整うにつれ、かの女は、むす子の落着いた姿と
見較
(
みくら
)
べて
憂鬱
(
ゆううつ
)
になり出した。とうとうかの女はいい出した。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
其
遽
(
あわただ
)
しさ、草から見れば涙である。然し油断してうっかり種をこぼされたら、事である。一度落した草の種は中々急に
除
(
と
)
り切れぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
その
遽
(
あわただ
)
しさ、幸福を二人の手の間からとり落すまいと、互に扶け合って時を惜しむ営みの姿のなかには、涙ぐまれる眺めがある。
これから結婚する人の心持
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
遽
(
あわただ
)
しく出入する御
同朋頭
(
どうぼうがしら
)
や御部屋坊主たちも、みんな
蒼
(
あお
)
ずんだ顔をしていたし、往来する老中、若年寄の人々も落着きのない眼を光らせていた。
城中の霜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
遽
(
あわただ
)
しい将官たちの
往
(
ゆ
)
き
来
(
き
)
とソビエットに挟まれた
夕闇
(
ゆうやみ
)
の底に横たわりながら、ここにも不可解な新時代はもう来ているのかしれぬと梶は思った。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
▼ もっと見る
発表されてから一ト月ほどの予猶など、瞬く間に過ぎてしまって、ただわけもなく
遽
(
あわただ
)
しさの中に、若い所員たちがゴソッと立って行ってしまった感じだった。
宇宙爆撃
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
こは浜方より運送の多寡、かつ諸方への出入り勘定、みなことごとく帳に託す。しかればかの帳はわが
家産
(
しんだい
)
なるを、
遽
(
あわただ
)
しき騒ぎに紛れ、焼き失いしや
弗
(
ふつ
)
にみえず。
失うた帳面を記憶力で書き復した人
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
門衛
遽
(
あわただ
)
しく遮って、「こらこら、ここは
寺院
(
てら
)
じゃないぞ。今日
葬式
(
とむらい
)
のあるなあ一町ばかり西の方だ。」
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
面長の美人であるが、蒼白で、痩せ衰へて、この年齢まで持ち
堪
(
こた
)
へてきた花やかさが
遽
(
あわただ
)
しげに失せやうとし、日毎に老ひ込むやうであつた。陰鬱な日は、
顳顬
(
こめかみ
)
に大きな膏薬を貼つてゐた。
蝉:――あるミザントロープの話――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
松王様とはつい昨年の八月に
猛火
(
みょうか
)
のなかで
遽
(
あわただ
)
しいお別れを致すまで、ものの十八年ほどの長い年月を、陰になり
日向
(
ひなた
)
になり断えずお
看
(
み
)
とり申上げるような
廻
(
めぐ
)
り合せになったのでございます。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
近い会場の浮立った
動揺
(
どよめき
)
が、ここへも
遽
(
あわただ
)
しい賑かしさを漂わしていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
『じゃ、子供さえ取返せばいいんですな』とルパンは
遽
(
あわただ
)
しく訊ねた。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
主婦は
遽
(
あわただ
)
しく鍋と火鉢と牝鶏と卵子二つを持って来た。
日本その日その日:01 序――モース先生
(新字新仮名)
/
石川千代松
(著)
主婦は
遽
(
あわただ
)
しく鍋と火鉢と牝鶏と卵子二つを持って来た。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
気まずい沈黙を破って、廊下を
遽
(
あわただ
)
しい足音。
判官三郎の正体
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして、二言三言佐々と話し、伸子に遠くから挨拶すると、
遽
(
あわただ
)
しく気取って出て行った。佐々は戸口までその男を見送った。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
銃猟は面白いものであろう。然しあの
遽
(
あわただ
)
しい羽音と、小さな
心臓
(
しんぞう
)
も
破裂
(
はれつ
)
せんばかり驚きおびえた悲鳴を聞いては……
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
良人
(
おっと
)
に連れられて外遊する船がナポリに着いた時、行き違ひに出て行かうとする船に乗り込む
遽
(
あわただ
)
しいかの女に、
埠頭
(
ふとう
)
でぱつたり
出遭
(
であ
)
つて、
僅
(
わず
)
かにお
互
(
たがい
)
に手を握つた。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
そうして何時か
黄昏
(
たそがれ
)
の迫った
遽
(
あわただ
)
しい街に出ると、周囲のでかでかしいネオンサインの中に“ツリカゴ”と淡く浮くちっぽけなネオンを、いじらしくさえ思うのであった。
孤独
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
去っていった女の
遽
(
あわただ
)
しい立ちざまを示すかのようだ。彼は手枕をして横になり、眼をつむった。
葦
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
松王様とはつい昨年の八月に
猛火
(
みょうか
)
のなかで
遽
(
あわただ
)
しいお別れを致すまで、ものの十八年ほどの長い年月を、陰になり
日向
(
ひなた
)
になり断えずお
看
(
み
)
とり申上げるやうな
廻
(
めぐ
)
り合せになつたのでございます。
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
安宿でもない、さりとて普通ではないこの二階の
遽
(
あわただ
)
しい空気が、今朝からお茂登のふれて来たあらゆるところに漲っていて、落付けないのであった。
その年
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
遽
(
あわただ
)
しい街の中をせかせか歩きながら、あの奇妙な『偶然』を幾度も幾度も反芻していました。
歪んだ夢
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
遽
(
あわただ
)
しく寺へ出入りする人の足音や、急にひっそりしたかと思うと、にわかに
罵
(
ののし
)
り喚く声などが、
昏沌
(
こんとん
)
とした俊恵の意識をときどき現実へひき戻した、だがそれを不審に思うゆとりはなかった
荒法師
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ヴィンダー(熱心に)違う!
遽
(
あわただ
)
しい、わくわくした、嵐のような歓びのそよぎだ——ほら! 来るぞ。来るぞ。
対話
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
軈
(
やが
)
て、岩ヶ根の
出
(
で
)
ッ
鼻
(
ぱな
)
が、行く手を遮って、黒々と、闇に浮出して来た。その蒼黒い巨大な虫を思わせる峰には、最初の日、見たような、くすんだ朱の火星が、チカチカと
遽
(
あわただ
)
しく、
瞬
(
またた
)
いていた。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
都会の
遽
(
あわただ
)
しさや早老を厭わしく思った時、藤村は心に山を描いた。幼心に
髣髴
(
ほうふつ
)
とした山々を。故郷の山を。
藤村の文学にうつる自然
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
れんの
遽
(
あわただ
)
しい今にも何かにつき当りそうなせき込んだはい、はいの連発ではない。
或る日
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そういう一つの
遽
(
あわただ
)
しい夕方、雄鳩は独り家に入った。人気なく、部屋への障子が開け放されている。彼は飢を感じた。麦のある戸棚の方へ飛び立った時、雄鳩は再び見た、忘れぬもう一つの鳩を。
白い翼
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
すると、女房が
遽
(
あわただ
)
しく水口から覗いて
牡丹
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
遽
漢検1級
部首:⾡
17画
“遽”を含む語句
急遽
遽然
遽々然
其遽
大遽
遽伯玉
遽色
遽雨
遽驚