途断とぎ)” の例文
旧字:途斷
途断とぎれ途断れに云う言葉をつぎ合せてみると、女は男の美貌に迷わされて、夫や可愛いい子供を捨てて駈落したものらしいのです。
むかでの跫音 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
「いえ、伍長殿。ほんとに迷ったのであります」それから声が低くなり何かくどくど言う声音であったが、声が途断とぎれると又急になぐるらしい気配がした。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
道が人気の絶えた薄暗い木立際こだちぎわへ入ったり、線路ぞいの高い土堤どての上へ出たりした。底にはレールがきらきらと光って、虫が芝生に途断とぎれ途断れに啼立なきたっていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
と色でまとまる壮佼等わかものども、よしこの都々逸どどいつ唱い連れ、赤城の裏手へ来たりしが、ここにて血のあと途断とぎれたり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御者ぎよしや鼻唄はなうたばし途断とぎれて、馬のに鳴る革鞭むちの響、身にみぬ、吉田行なるうしろなる車に、先きの程より対座の客のおもて、其の容体ようだいいぶかしげにながめ入りたる白髪の老翁
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
里の市が流して行く笛の音が長く尻を引いて、張店はりみせにもやや雑談はなし途断とぎれる時分となッた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
里の市が流して行く笛の音が長く尻を引いて、張店にもやや雑談はなし途断とぎれる時分となッた。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
二人ふたりの言葉は一寸ちよつ途断とぎれた。そして何所どこへともなく目的あてどなくあるいて居るのである。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
うめきともわめきともつかない声が——それも雨風の途断とぎれ途断れに聞えて来た。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二声ふたこえ三声みこえ呼んでみたが、グウ/″\といびき途断とぎれませんから、そっと襟の間へ細引を挟み、また此方こちらあやに取って、お賤は新吉に眼くばせをするから、新吉ももう仕方がないと度胸をえて
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「この先何かいおうと思ったが、何だか途断とぎれそうだから、これでやめます。一杯のんで思い出したらまた遣ることにします。」と坐ると、庄亮が「なるほど、これはうめえ。」と頭を叩いたこと。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
里の市が流して行く笛の音が長く尻を引いて、張店にも稍雑談はなし途断とぎれる時分となツた。
里の今昔 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
会話が途断とぎれてから二時間ほど黙りこくって歩いた。幽かな径の跡が二叉にわかれている。何れをとってもさほど逕庭けいていはないみちだと高城が言うので、彼はしばらく考えた末、山に入る道を選んだ。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
と着物を着替きかえ、友之助は二階の小間こまに入って、今に死のう、人が途断とぎれたら出ようと思って考えているから酒ものどへ通らず、只お村は流れたかと考えて居りますと、広間の方で今上って来たか
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)