車夫しゃふ)” の例文
かさを かぶった おじいさんの 車夫しゃふです。そして くるまの うえには、それは きれいな およめさんが のって いました。
こがらしの ふく ばん (新字新仮名) / 小川未明(著)
うろうろ徘徊はいかいしている人相にんそうの悪い車夫しゃふがちょっと風采みなり小綺麗こぎれいな通行人のあとうるさく付きまとって乗車をすすめている。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
徳「そりゃア必ず云いません、今こそ車夫しゃふだが大西徳藏、いさゝか徳川のくせい米を食って親を泣かした人間だから、云わんと云ったら口が腐っても云いはしない」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何処の商店でも同じように、われ/\ぐらいの年配の小僧は、ていのいゝ労働者であって、日がな一日、体を激しく使う事は、車夫しゃふ馬丁ばていと殆んど択ぶ所はない。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
手紙はごく簡単なものであったが、断らないで走るよりまだ増しだろうと思って、それを急いでうちへ届けるように車夫しゃふに頼んだ。そうして思い切ったいきおいで東京行きの汽車に飛び乗ってしまった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
牡蠣船のある方の岸は車の立場たてばになっていて柳の下へは車を並べ、その傍には小さな車夫しゃふたまりもうけてあった。車夫小屋と並んで活動写真の客を当て込んでしいの実などを売っている露店ろてんなどもあった。
牡蠣船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
車夫しゃふかしらを振り向けて
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして通りがかりのなるべくきたない車、なるべく意気地いくじのなさそうな車夫しゃふを見付けて恐る恐る
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
幌が少し破れて、雨がぽたり/\と漏ります。梶棒の尖端とっさきを持ってがた/\ゆるがせて、建部の屋敷裏手までまいると、藤川庄三郎曲り角の所から突然だしぬけ車夫しゃふの提灯を切って落した。
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
車夫しゃふは年頃四十五六しじゅうごろく小肥満こでっぷりとした小力こぢからの有りそうな男で、酒手さかて請取うけとり荷を積み、身支度をして梶棒かじぼうつかんだなり、がら/\と引出しましたが、古河から藤岡ふじおかまでは二里里程みちのり
然るに当日午後の四時を期して上野停車場の待合室に集るものを見れば会長巌谷小波いわやさざなみ先生を始めとして十四、五人の会員一人として罰金を出すものなくいづれも車夫しゃふ、牛乳配達夫、職人
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
車夫しゃふはがら/\引いてまいりますと、積んで来た荷の中の死骸が腐ったも道理、小春なぎのあたゝかい時分に二晩ふたばんめ、又うちかえって寒くなり、雨に当り、いきれましたゆえ、臭気はなはだしく
十九ケ年振りで真実のいもとい何うか身請をして松山の家を立てさせて、思う男の藤川庄三郎に添わしてやりたいと腹で種々いろ/\に考えて、明後日あさっては身請をする心持で車夫しゃふを急がしても
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あの車夫しゃふの峯松と云うものはわたくしの供じゃア有りません、雇人やといにんでもないので、実は渋川の達磨茶屋で私共わたくしども昼食ちゅうじきを致して居りますと、車夫が多勢おおぜい来て供をようと勧めました其のうち
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
又作は近辺あたりを見返ると、往来はぱったり止まって居りますから、何かの事を知った此の車夫しゃふけて置いては後日ごにちさまたげと、車夫のすきまうかゞい、腰のあたりをポオーンと突く、突かれて嘉十はもんどり切り