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貧
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まづし
草を
刈鎌をさへ
買求るほどなりければ、火の
為に
貧くなりしに家を
焼たる
隣家へ
対ひて
一言の
恨をいはず、
交り
親むこと常にかはらざりけり。
亡ひ
未子も無りしが其後
夫を持ず姑に
事へて孝行を盡くしけるに元より其
家貧ければ
麻をうみ
機を織て朝夕
姑女を
草を
刈鎌をさへ
買求るほどなりければ、火の
為に
貧くなりしに家を
焼たる
隣家へ
対ひて
一言の
恨をいはず、
交り
親むこと常にかはらざりけり。
持貧き上に
貧しくならん今の中に江戸に出て五六年も
稼なば能き事も有べしと思ひ或日叔母女房に向ひ此事を
直談に及びければ大いに
驚き是は思ひ
掛なき事を
濟せ立ち歸る時に又
叔母のお早を尋ねしに
猶段々と
難儀の
咄しをなす故見捨難く近所へ
厚く
禮を述べ直に越後へ
連歸りぬ扨傳吉は
貧き
暮しの中にて叔母と
從弟を
此馬冬こもりの
飼やうによりて
痩ると
肥るありて、やせたるは馬
主の
貧さもしるゝものなり。
此馬冬こもりの
飼やうによりて
痩ると
肥るありて、やせたるは馬
主の
貧さもしるゝものなり。
此一家の
者すべて
篤実なれば
耕織を
勤行、
小農夫なれども
貧からず、
善男をもち
良娵をむかへ
好孫をまうけたりとて一
村の人々
常に
羨けり。かゝる
善人の
家に天
災を
下ししは
如何ぞや。