蛸壺たこつぼ)” の例文
竜安石の下の蛸壺たこつぼになっているようなところへ突っ込むと、暫くして、極めて巧みに掴み出したのは、六寸ほどの蛸であります。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
近年倉敷に羽島窯が起り、よい雑器を試みます。浅口郡に大原窯おおはらがまがあって、くすりのない瓦焼で、土瓶とか焙烙ほうろくとか土鍋とか蛸壺たこつぼとかを作ります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
刄物はものもつつあしてもどう一である。蛸壺たこつぼそこにはかならちひさなあな穿うがたれてある。しりからふつといきけるとたこおどろいてするとつぼからげる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
蛸壺たこつぼやはかなき夢を夏の月」の句を英訳することが、ほとんど不可能であるのと同じくらいに、困難な仕事である。
日本のこころ (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
北口をやくする一箇大隊の将兵は、昼間は個々の蛸壺たこつぼに身をひそめ、身体をかがめて自らの口を充たすべき籾を搗き、夜に入れば初めて地上に出て戦った。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
假令たとひ監視かんしからのがれてをんな接近せつきんしたとしても、んだをんなじやうこはければ蛸壺たこつぼたこだまされるやうにころりとおと工夫くふうのつくまではをとこ忍耐にんたいむし危險きけんとをあわせてしのがねばらぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
彼等かれらをんな所在ありかねらふのはきはめて容易よういなもののやうではありながら蛸壺たこつぼすこしのさまたげもなくしづめられるやうではなく、父母ふぼやみにさへひかりはなつてをんな彼等かれらから遮斷しやだんしようとしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)