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おちつ
ふりがな文庫
“
落著
(
おちつ
)” の例文
今度は
落著
(
おちつ
)
いて、畳の上に
坐
(
すわ
)
りこんで、毎日使っている
花梨
(
かりん
)
の机の上に立ててみると、三、四分でちゃんと立たせることが出来た。
立春の卵
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
と
然
(
さ
)
り
気
(
げ
)
なく答えはいたしまするものゝ、その慌てゝ居ります様子は直ぐ知れます、そわ/\と致して
些
(
ちっ
)
とも
落著
(
おちつ
)
いては居ません。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
袴野はこういうすてが気負って言っているのだと思ったが、
落著
(
おちつ
)
きはらったすてに、こういう無関心な冷たさがあろうとは思えなかった。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
贅沢の限りを尽くした人の最後の
落著
(
おちつ
)
き場所である。それが貴い悟りであるかも知れぬ、また止むを得ぬ
諦
(
あきら
)
めであるかも知れぬ。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
パリスカスは見慣れぬ周囲の風物を特別不思議そうな
眼付
(
めつき
)
で
眺
(
なが
)
めては、何か
落著
(
おちつ
)
かぬ不安げな表情で考え
込
(
こ
)
んでいる。
木乃伊
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
▼ もっと見る
その赤がまた非常に
落著
(
おちつ
)
いた色合なのです。しかもその赤の間を、太々と豊かに白の
漆喰
(
しっくい
)
を盛り上げるのです。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
奥のかた霊前では、既に立ち去ろうとした北鳴四郎が、ばつの悪そうな、というよりも
寧
(
むし
)
ろ恐怖に近い面持をして、
落著
(
おちつ
)
かぬ
眼
(
まなこ
)
を四囲にギロギロ移していた。
雷
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
やがて
仄暗
(
ほのぐら
)
い夜の色が、
縹渺
(
ひょうびょう
)
とした水のうえに
這
(
はい
)
ひろがって来た。そしてそこを離れる頃には、気分の
落著
(
おちつ
)
いて来たお島は、腰の方にまた
劇
(
はげ
)
しい
疼痛
(
とうつう
)
を感じた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼は気を
落著
(
おちつ
)
けようとして眼を閉じ、雑念を
拒止
(
きょし
)
して心を落著けて腰を下した。彼は一つのひらたい丸い黒い花が、
黄橙
(
おうとう
)
の
心
(
しん
)
をなして浮き出し
左眼
(
さがん
)
の
左角
(
ひだりかど
)
から漂うて右に到って消え失せた。
幸福な家庭
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
そしてあれならば大名などが
静謐
(
せいひつ
)
な部屋に置いて
落著
(
おちつ
)
いて鑑賞することも出来るし、
光琳
(
くわうりん
)
、
抱一
(
はういつ
)
の二家が
臨摸
(
りんぼ
)
して後の世まで伝はつてゐるのもさういふわけ
合
(
あひ
)
で、肉体的に恐ろしくないからである。
雷談義
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
もう実は仰しゃる通り
沈著者
(
おちつきもの
)
で、
種々
(
いろ/\
)
に分別して、人という者は事を
落著
(
おちつ
)
け心を静めて見れば、
何
(
ど
)
んな事でも死なずに済むものだと申して
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
袴野は自分の猛るよりも、すての猛りがさかんで手向い出来ない高飛車なものであること、懸命なそのくそ
落著
(
おちつ
)
きにこの女、人がちがって来たと思った。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
ふん、まだ三十になりもしないのに、その取澄ました
落著
(
おちつ
)
き方はどうだ。今から何もムッシュウ・ベルジュレやジェロオム・コワニァル師を気取るにも当るまいではないか。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
ヘッケルの進化論というのは、
正
(
まさ
)
しく私たちが小学校で聞かされた話を、少し
鹿爪
(
しかつめ
)
らしくしたようなものであった。そしてその最後のところは、物質と勢力との一元論に
落著
(
おちつ
)
くというのであった。
簪を挿した蛇
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
彼はそう思うと心が
顛倒
(
てんとう
)
して二つの眼が暗くなり、耳朶の中がガーンとした。気絶をしたようでもあったが、しかし全く気を失ったわけではない。ある時は慌てたが、ある時はまたかえって
落著
(
おちつ
)
いた。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
もう六十有余にもなる質朴の田舎
爺
(
おやじ
)
でげすから、まさか
悪気
(
わるぎ
)
のあるものとも思われぬので、お若さんも少しは心が
落著
(
おちつ
)
き、
明白
(
あからさま
)
に駈落のことこそ申しませぬが
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
どうかを医者が親戚たちに計った時、伯父の平生の気質から推して、本当のことをはっきり言ってしまった方がかえって
落著
(
おちつ
)
いた綺麗な往生が遂げられるだろうと、一同が答えたのであるという。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
早く坊さんが来て帰ってくれないと伊之さんに済まないとそればかりに気を取られ、始めの
中
(
うち
)
は家の様子に気もつきませんでしたが、気を
落著
(
おちつ
)
けて考えて見ますれば不審でげす。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
上級生との間に今云ったような
経緯
(
いきさつ
)
が前からあったので、それで彼も、その時、素直にあやまれなかったのであろう。其の夕方、天幕が張られてからも、彼はなお不安な
落著
(
おちつ
)
かない面持をしていた。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
森「そうして気の
落著
(
おちつ
)
いた時分、どうせ
仕舞
(
しめえ
)
は
内済
(
ないせい
)
だから人を頼んで訳を付けやしょう」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と有合わした小遣を遣り、子供を抱いたり
負
(
おぶ
)
ったり致して、番頭立合で往って見ると、なさけなき
死様
(
しによう
)
だ、常に
落著
(
おちつ
)
きまして中々切腹する様な人では無いが、何う云う訳か頓と分らない。
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
森「
癇癪
(
かんしゃく
)
を起しちゃアいけませんよ、
彼奴
(
あいつ
)
が抜いたらホカと逃げてお仕舞いなせえ、
何
(
なん
)
でも逃げるが勝だ、
然
(
そ
)
うして
向
(
むこう
)
の気が
落著
(
おちつ
)
いた処で人を
以
(
もっ
)
て話をすりゃア、とゞの詰りは金だ/\」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
落著
(
おちつ
)
いてこれから歩き出すという身の上にゃア
往
(
い
)
かないてえんで
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
梅「呆れてしまう、腹が立つなればね、宿屋へ泊って
落著
(
おちつ
)
いてお云いな、何もこんな夜道の峠へかゝって、人も居ない処へ来て
打擲
(
ぶちたゝ
)
きするは
余
(
あんま
)
りじゃアないか、
此処
(
こゝ
)
で別れるとお云いのはお前見捨てる了簡かえ」
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
落
常用漢字
小3
部首:⾋
12画
著
常用漢字
小6
部首:⾋
11画
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落著振