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菊石
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あばた
ふりがな文庫
“
菊石
(
あばた
)” の例文
田原町の
經師屋
(
きやうじや
)
東作、四十年輩の氣のきいた男ですが、これが描き
菊石
(
あばた
)
の東作といはれた、
稀代
(
きだい
)
の兇賊と知る者は滅多にありません。
銭形平次捕物控:075 巾着切の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
が、良沢は、光沢のいい総髪の頭を軽く下げただけで、その白皙な、鼻の高い、薄
菊石
(
あばた
)
のある大きい顔をにこりともさせなかった。
蘭学事始
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
首に
珠數
(
じゆず
)
を
懸
(
か
)
けた百姓らしい中年の男女が、
合乘車
(
あひのりぐるま
)
の上に
莞爾
(
にこ/\
)
しつゝ、
菊石
(
あばた
)
の
車夫
(
しやふ
)
に、重さうにして曳かれて來るのにも逢つた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
と言つて僕は
菊石
(
あばた
)
ではない。春先き蚊取線香の余徳で微醺を呼んだ僕はそれ以来寒中に近江の商人をなつかしむのである。
車中も亦愉し
(新字旧仮名)
/
小津安二郎
(著)
「なぜにもなにも、袖をひきちぎって、すっかり顔をつつんでおりまして、
菊石
(
あばた
)
やら、ひょっとこやら、てんで知れない」
顎十郎捕物帳:08 氷献上
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
▼ もっと見る
白
菊石
(
あばた
)
の顔が長くて、前にしゃくれた
腮
(
あご
)
が
尖
(
とが
)
っている。
痩
(
や
)
せていて背が高い。
若
(
も
)
しこの男が硬派であったら、僕は到底免れないのであったかと思う。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そのあとは太鼓のかげの暗いところにしゃがんで待機していた坊主頭で大
菊石
(
あばた
)
のある浅草亭
馬道
(
ばどう
)
という人が上がった。達者に「大工調べ」をやりだした。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
父は色が黒くて
菊石
(
あばた
)
があったから、この上黒く干しかためた小僧だったら、どんなに汚なかったろうと思った。
旧聞日本橋:15 流れた唾き
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
おむかうの
菊石
(
あばた
)
顏
(
づら
)
の
若
(
わか
)
だんな。おほゝゝゝ。なにをそんなにお
欝
(
ふさ
)
ぎなの、
大抵
(
たいてい
)
で
諦
(
あきら
)
めなさいよう。いくらかんがえたつて、みつともない。
第
(
だい
)
一そのお
面
(
めん
)
ぢやはじまらないんだから
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
金五郎の下で、
助
(
すけ
)
ボーシンをしている松川源十は、顔中、
菊石
(
あばた
)
なので、「六ゾロの源」と、仲間から呼ばれている。六ゾロは
骰子
(
さいころ
)
の六の目が二つ列んだ形だ。源十も小博徒である。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
うす
菊石
(
あばた
)
のある大柄な顔をうつむかせた長庵、十
徳
(
とく
)
の袖に両手を呑んで、ブラリ、ブラリ、思案投げ首というとしおらしいが、考えこんで来かかったのが、九段下のまないた橋だ。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
躯
(
からだ
)
は小さいし、かた肥りで不恰好だし、うす
菊石
(
あばた
)
のある顔だちも栄えなかったが、気性が明るく動作もてきぱきして、
粗忽
(
そこつ
)
なところもあるが、たいへん気はしが利くため信近の気にいりで
おれの女房
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お歌ちやんは優しくて女のやうな気のする
兄
(
にい
)
さんと、
菊石
(
あばた
)
の顔にある
嫂
(
あによめ
)
に育てられて居るのでした。両親はもうありませんでした。私が学校へ行き初めた頃、力にしたのはこのお歌ちやんでした。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
顔ばかりでなく体じゅうに
菊石
(
あばた
)
のある
銭豹子
(
せんびょうし
)
という
鍛冶屋
(
かじや
)
さんだ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
野毛山の親分というのは年齢のころ六十一二、赭ら顔の薄
菊石
(
あばた
)
のある大男で、右の眼の下に三日月の大きな傷痕がある。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「
描
(
か
)
き
菊石
(
あばた
)
の
東作
(
とうさく
)
といふ野郎で、——仕事をする時だけ、自分の顏へ繪の具で菊石を描くほどの用心深い奴ですよ」
銭形平次捕物控:075 巾着切の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
勿體
(
もつたい
)
ない/\。」と、道臣も
菊石
(
あばた
)
のある
赭顏
(
あからがほ
)
を酒にほてらしつゝ、兩手に櫻と桃とを
翳
(
かざ
)
した喜びの色を
漲
(
みなぎ
)
らした。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
白い四角な顔の、お習字を教える校長のお母さん、黒い細い顔で
菊石
(
あばた
)
のある校長、丸い色白の
御新造
(
ごしんぞ
)
さんたちが、苦いお茶を出し、羊羹を出してもてなした。
旧聞日本橋:25 渡りきらぬ橋
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
奥山の話は
榛野
(
はんの
)
という男の事に連帯して出るのが常になっている。家従どもは大抵
菊石
(
あばた
)
であったり、
獅子鼻
(
ししばな
)
であったり、
反歯
(
そっぱ
)
であったり、満足な顔はしていない。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
なんとしても、あの
菊石
(
あばた
)
の殿様にお艶さんを
自儘
(
じまま
)
にさせることはできねえ!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「お糸さんとお留さんと、お柳と、娘が三人、それに縫箔屋の丹次と、
菊石
(
あばた
)
の又六と、もう一人入れて、男が三人」
銭形平次捕物控:086 縁結び
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
菊石
(
あばた
)
も
笑靨
(
えくぼ
)
で、どこに惚れこんだのか、こんなに成りさがっても、先生とか阿古十郎さんとか奉って、むずかしい事件がもちあがるとかならず智慧を借りに来る。きょうもその伝なので。
顎十郎捕物帳:22 小鰭の鮨
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「
巫山戯
(
ふざけ
)
るなよ、馬鹿野郎。
菊石
(
あばた
)
で
眇目
(
すがめ
)
だった日にゃ、貞女だって石塔だって、担ぐ気になる
手前
(
てめえ
)
じゃあるめえ」
銭形平次捕物控:078 十手の道
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
巫山戯
(
ふざけ
)
るなよ、馬鹿野郎。
菊石
(
あばた
)
で
眇目
(
すがめ
)
だつた日にや、貞女だつて
石塔
(
せきたふ
)
だつて、擔ぐ氣になる
手前
(
てめえ
)
ぢやあるめえ」
銭形平次捕物控:078 十手の道
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「娘の命を助けたのは、他ぢやねえ、錢形の平次親分だ。三百八十兩拔いたのは、
描
(
か
)
き
菊石
(
あばた
)
の東作と話すと——」
銭形平次捕物控:075 巾着切の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「え、あの
菊石
(
あばた
)
の又六と結び付けられて、妻恋様の格子に結ばれるのを、娘はどんなに嫌がったことでしょう」
銭形平次捕物控:086 縁結び
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
玉子を
剥
(
む
)
いたようなあやめさんと、
疱瘡
(
ほうそう
)
で
菊石
(
あばた
)
になったお百合さんとは同じ姉妹でも大変な違いようで、仰向きになっていれば、間違えるようなことはありません
銭形平次捕物控:090 禁制の賦
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
少し
菊石
(
あばた
)
があつて、五尺六七寸の大兵、腕自慢らしい、——そして
磊落
(
らいらく
)
さを看板にして、つまらないことにも
肩肘
(
かたひぢ
)
を張つて見せる男ですが、平次の馴れた眼から見れば
銭形平次捕物控:195 若党の恋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「あの弟野郎ですよ、——
嫂
(
あによめ
)
を殺したのは、ひよつとしたら、あの
菊石
(
あばた
)
野郎ぢやありませんか」
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「それに繼しい仲の——殺されたお百合さんは、ひどい
菊石
(
あばた
)
の上に、足も惡く、
尼
(
あま
)
さんのやうな淋しい心掛で暮して居る方でしたが、そのお心持の立派なことと申しては——」
銭形平次捕物控:090 禁制の賦
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「ところで、彦兵衛、その巾着切りの薄
菊石
(
あばた
)
を、お前は心当りがありそうだが——」
銭形平次捕物控:075 巾着切りの娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
最初は
見馴
(
みな
)
れた私も、妹のあやめさんと間違へたほどですから、玉子を剥いたやうなあやめさんと、
疱瘡
(
はうさう
)
で
菊石
(
あばた
)
になつたお百合さんとは同じ姉妹でも大變な違ひやうで、仰向になつてゐれば
銭形平次捕物控:090 禁制の賦
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「え、それからもう一人、有馬屋の番頭——
菊石
(
あばた
)
の
又六
(
またろく
)
が——」
銭形平次捕物控:086 縁結び
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
“菊石”の意味
《名詞》
アンモナイトの化石。
(出典:Wiktionary)
菊
常用漢字
中学
部首:⾋
11画
石
常用漢字
小1
部首:⽯
5画
“菊石”で始まる語句
菊石面