義兄あに)” の例文
しておりましたが、子供達がやかましく言って、義兄あにへ詫を入れることになってから、早いもんで、——もう三年になりますよ、ヘエ
など、ほとんどが菊池、阿蘇あその協同者だった。そして英時ひでときほふったのだ。——それらすべてが尊氏には義兄あにあだといえなくもない。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
では友よ——義兄あにだったね! 君の父上平左衛門殿へ——そうそう僕にもお義父とうさんだったね? どうぞよろしくいってくれたまえ
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
貴女が義兄あに上と送りに来て下さって、初夏の陽ざしの中にハンカチを振っていられたあの時の姿が眼の前にちらついてくる……。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「いや、もう会いますまい、義兄あにが国老になれば小野(領地)にいてやらなければならない、暇もないが貴方に会う興味もなくなりましたよ」
「うっかりあの人に見せられないような物ばかりでね。」と、叔母は道楽ものの亭主を恐れていたが、義兄あにの懐へ吸い込まれて行く高も少くなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「あなた、今日出て行って下さい。……義兄あにさんのいうのが本当です。あなたが一体函根からまた此家ここへ舞い戻って来るというのが違っているんですもの」
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
小坂部はどこまでも彼のあとを追って行きたいような心持にもなって、暫くはうっとりと見送っていると、式台は俄かにざわめいて、義兄あにの三河守師冬が出て来た。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もう其の頃は、夕刊に、出て騒ぎになっていたんですが、義兄あには未だ何も聞いていない風でした。
アリゾナの女虎 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
いつ迄、暗闇の中に愚図々々してもいられないので渋々庫裏のほうへ取ってかえすと、ちょうど庭下駄を突っかけて義兄あにの玄正が自分を探しにでようとしているところだった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
義兄あにの唐木屋利七にお鳥の無残な最期の様子さまを物語らなければならないことが情けない。
姉には三ツになる男の子がある。義兄あには年の頃四十近く、職務のつかれよりも上役の機嫌と同僚の氣受を窺ふ氣づかれに精力を消耗してしまつたやうに見える有りふれた俸給生活者。
或夜 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
それは義兄あにの陸軍中尉川村国彦かわむらくにひこだった。旗男の長姉ちょうしにあたる露子つゆことついでいるのだった。旗男は、東京の中学の二年生で、夏休を、この直江津なおえつの義兄の家でおくるためにきているのだった。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「あ。どうも」と言うと、義兄あには笑いながら
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
怪しいとにらんで、義兄あにに勧めて遠ざけたんだ。お紋はそれを根に持って高木銀次郎を縛らせ、自分が荻野家へ還る筋書を作ったのさ
これから義兄あにとよぶ姉上の聟君がこの人かと、おや屋は少女らしい眼で彼の顔をのぞきあげたが、すぐ後からまた縁者の一組が
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おれは見なかったが、義兄あにから聞いた、その中ではっきり一ノ関を非難していたそうではないか、おい女、酌を忘れるな」
ただ生きてこの世で再び貴女や義兄あに上に、お眼にかかれようとは絶対に考えられない淋しみのみが、限りなく私の心を暗くさせているばかりです。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「こんなことは義兄あにの松村にも聞かしたくない。しかし義兄の手前、屋敷中の者どもの手前、なんとかおさまりを付けなければなるまいが、どうしたものでござろう」
半七捕物帳:01 お文の魂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
義兄あにと切れることの出来なかった妹や、倉へ入って、白小袖を着て、剃刀かみそりで自殺したという姉のことを、浅井から聞いたとき、お増はそれを浄瑠璃じょうるりか何ぞにあるような
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
姉には三ツになる男の子がある。義兄あには年の頃四十近く、職務のつかれよりも上役の機嫌と同僚の気受を窺う気づかれに精力を消耗してしまったように見える有りふれた俸給生活者。
或夜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
義兄あにであり恋人であり許婚いいなずけである、主水とゆくゆくは婚礼し、身も心も捧げなければならぬ身! それまでは穢さず清浄に、保たねばならぬ処女の体! それを山国の木曽あたりの
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
けれど、義兄あにの上杉憲房はじめ、義姉あねの清子につながる足利兄弟、その有縁うえんなど、家垣のすべては名だたる武族のみである。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「貴方は佐月どのの葬儀にも松山へゆかれなかったし、青根の宿では私の義兄あに(伊東新左衛門)と話しもされなかった」
この手紙がお手許へ届きましたならば、この国で私がどんなに幸福に暮しているかを知って下さって、姉上貴女もどうか幸福に義兄あに上と暮して下さい。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
仇敵かたきのように憎んで居た夫の佐良井には、生前はどうしても自由にさせなかった巨万の富を、此世で一番慕って居た義兄あにの私には、赤鉛筆で印を付けた
死の舞踏 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「こんなことは義兄あにの松村にも聞かしたくない。しかし義兄の手前、屋敷中の者どもの手前、なんとかをさまりを付けなければなるまいが、何うしたものでござらう。」
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「そうすれば、院長の祖母さんところへ入り浸っている義兄あにさんなぞも危いわけじゃないか。」
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
義兄あにであり恋人であり、許婚いいなずけである主水様に、瞬間逢い瞬間別れた!
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
このたび討呉の一戦は、義兄あに関羽のとむらい合戦だ。兵船のとばりから武具、旗、甲、戦袍ひたたれの類まで、すべて白となし、白旗白袍はっきはくほうの軍装で出向こうと思う。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
盡した掲句あげく、あんな商賣をして居りましたが、子供達がやかましくつて、義兄あにへ詫を入れることになつてから、早いもんで、——もう三年になりますよ、へエ
「わからない、ずっと以前からかもしれないが、おれが気づいたのは義兄あにの死んだあとだ」
その娘のおたねを連れ、駿州江尻在大平村から、義兄あにの長庵を手頼りにして、江戸へ出て来て今日で五日、義兄の口入れで娘お種を、吉原江戸町一丁目松葉屋半左衛門へ女郎に売り込み、年一杯六十両
村井長庵記名の傘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
奉公先きに対する意見の相違で、彼は義兄あにの要作と衝突した。
というわけで、石秀が男女ふたりを見る目もちがっていた。そしてまた、義兄あにの楊雄の身にもならずにいられない。業腹ごうはらが煮えてくる。面罵めんばしてやりたくなる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ばかなことはないさ、義兄あに(新左衛門)が死んで以来、休みなしに三人分もはたらいて来た、七十五日の法要が済んで、久方ぶりにいとまが出たから、保養にでかけるんだ」
義兄あにが死んだのは一昨日の朝で——尤も夜中に死んで居たのを、下女が朝起しに行つて見付けたさうですが、昨夜ゆうべまでも何の障りもなく、お通夜坊主が來て、長いお經をあげて歸りました。
異父弟の、羽柴秀長も、紀泉二ヵ国の領主として、今では、大坂城中の有数な大名のひとりではあったが、もとより義兄あに秀吉の眼から見れば、これも不愍な生い立ちの弟だった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義兄あにが死んだのは一昨日おとといの朝で——もっとも夜中に死んでいたのを、下女が朝起しに行って見つけたそうですが、昨夜ゆうべまでも何の障りもなく、お通夜坊主が来て、長いお経をあげて帰りました。
「——これはすばらしい。庭園もいいが、水亭閣廊すいていかくろう、四門の造り、おまけにいき数寄屋すきやまで、どうしてこんな田舎にあるのか。さっそく義兄あにに話して、下屋敷におすすめしよう」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの子だつて荻野をぎの左仲樣の子か何うか解つたものぢやねえ。高木銀次郎といふのは解つた人で、お紋の素姓を怪しいと睨んで、義兄あにに勸めて遠ざけたんだ。お紋はそれを根に持つて高木銀次郎を
新吉は言ひかけて口をつぐみました。お駒を犬畜生にする岩松に、反感らしいものを持たないではありませんが、さうかと言つて、この氣の強い義兄あにに、たてを突くことは思ひも寄らなかつたのです。
冬ごろから伊賀の国中も平穏でなく、服部治郎左衛門と卯木の夫婦も、正成を義兄あにに持つ者といわれて、小馬田こまたノ庄にも居られなくなり、おなじことならと、金剛山のとりでへ落ちて来たのである。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新吉は言いかけて口をつぐみました。お駒を犬畜生にする岩松に、反感らしいものを持たないではありませんが、そうかといって、この気の強い義兄あにに、楯を突くことなどは思いも寄らなかったのです。
で、義兄あにの上杉憲房のりふさに一応の相談をしてみると
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その日の夕刻、新吉の義兄あにの岩松は番所に呼出されました。
「いや、從兄同士とはいふものの、血のつながりは遠くなります。新六郎の父親は、この坂倉屋の先代で、私には義理の兄に當り、お銀の母親は、私の義兄あにの妹で、これも私の娘のお絹とは名ばかりの從姉いとこ同士になります」