ちゞみ)” の例文
 貴重尊用きちようそんようちゞみをさらすはこれらとはおなじくせず、別にさらし場をもうけ、よろづに心を用ひてさらす事御はたをおるに同じ。
ひたいひろの大きな仏教に縁のある相である。ちゞみ襯衣しやつの上へ脊広せびろを着てゐるが、脊広せびろ所々ところ/″\しみがある。せいは頗る高い。瘠せてゐる所が暑さに釣り合つてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ぬすみ出し其上そのうへ臺所だいどころへ火を付何處いづくともなく迯失にげうせけり折節をりふしかぜはげしく忽ち燃上もえあがりしかば驚破すは火事くわじよと近邊大に騷ぎければ喜八はまご/\して居たりしが狼狽うろたへ漸々やう/\屋根よりはおりたれ共あしちゞみ歩行あゆまれず殊に金子と庖丁はうちやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
我が郡中ぐんちゆう小千谷をぢやちゞみ商人芳沢屋よしさはや東五郎俳号はいがうを二松といふもの、商ひのため西国にいたりある城下に逗留とうりうの間、旅宿のあるじがはなしに
およそ織物おりもの専業せんげふとする所にては、織人はたおりかゝへおきておらするを利とす。ちゞみにおいてはべつき一国の名産なれども、織婦はたおりをんなかゝへおきておらする家なし。
そも/\ちゞみとなふるは近来きんらいの事にて、むかしは此国にてもぬのとのみいへり。布はにてる物の総名そうみやうなればなるべし。
稲穂いなぼ又は紙にて作りたる金銭、ちゞみあきびとなどはちゞみのひな形を紙にて作り、農家のうかにては木をけづりて鍬鋤すきくはのたぐひ農具のうぐを小さく作りてもちばなの枝にかくる。
東五郎猶その村その人をもたづねきけば、鶴をたすけたる人は東五郎がちゞみを売たる家なれば、すぐさまその家にいたりなほくはしく聞て、さて国の土産みやげにせん、もみを一二粒たまはれかしとこひければ