さい)” の例文
に入りさいわたるのは学術の本義ですけれども、学生時代に色々な学説を聞かされるということはなり厄介に感ずるものです。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
人々は、今は石のように身動きもせず、ジットリと汗ばむ手を握りしめて、さい穿うがって鮮かな、名探偵の推理に聴き入っていた。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おそらくに入りさいわたって問われたであろうことは疑いない。時々の人の気はいもないような沈黙がつづくかと思うと、諄々じゅんじゅんと、またひそかな声が洩れる。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又、バクダッドの宮室庭園を写した文章の如きは、に入りさい穿うがつてつて、光景見るが如きものがある。
ばけものゝ一めんきはめて雄大ゆうだい全宇宙ぜんうちう抱括はうくわつする、しかの一めんきはめて微妙びめうで、ほとんさいわたる。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
あまりにもに入りさいをうがって、いかにも真に迫っているものだから、検事はそれにて罪状明白、証拠充分ということになって、私は、ばかを見るかも知れない。
春の盗賊 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ことわざに其事なんぢに出て爾にかへるとむべなる哉此言や所化しよけ願山の白状はくじやうに因て再度日野家の一件委さい吟味有るべしと大岡殿差※さしづあつて平左衞門を呼び出されしに平左衞門は又何を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
金太郎は中學で物理の時間に四かくをりのやうなはりさい工のはこの中に人間を入れておいて、そのはこに高あつ電流を通じても、中の人間は少しも知らないで平然としてゐられる
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
さい穿うがつといったような詳しさで、米良夫妻はいささかおどろいたようであった。
末っ子 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
さい穿うがち描写するに過ぎない、謂わば一人よがりの退屈きわまる代物だったものですから、それは無理もないことと云わねばなりません。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その又リアリズムのさいに入つてゐることは少しも前人の後に落ちない。若しこの一点を論ずるとすれば、僕は何の誇張もなしにトルストイよりも細かいと言ひ得るであらう。
法令は、年ごとに、に入りさいに入って、小やかましい箇条を加え、鷹匠たかじょう、鳥見組の同心は、ことごとく御犬奉行や犬目付へ転職になり、市中には、犬医者のかんばんが急にふえた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さい穿うがった分析ならびに綜合の結果、ちり一筋ひとすじの手抜かりもない、絶対に安全な方法を考え出したのだ。
心理試験 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
持ちません。探偵道には『多分そうだろう』という考え方は許されないのです。どんなささいな疑いも見のがしてはなりません。それが非常に重大な結果をひき起すことがあるからです
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)