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筬
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おさ
ふりがな文庫
“
筬
(
おさ
)” の例文
仕事は
盛
(
さかん
)
で、島を
訪
(
おとの
)
うと
筬
(
おさ
)
の音をほとんど戸
毎
(
ごと
)
に聞くでありましょう。特色ある織物としてこの島にとっては大切な仕事であります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
機
(
はた
)
を織る
筬
(
おさ
)
の音が、この乱世に太平の響きをさせる。知らず知らず
綾小路
(
あやこうじ
)
を廻って見れば、田圃の中には島原の
灯
(
ひ
)
が
靄
(
もや
)
を赤く焼いている。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
カラカラと明け方の街道をとおる
野菜車
(
やさいぐるま
)
、どこか裏の方で、もう仕事をはじめたらしい
機屋
(
はたや
)
の
筬
(
おさ
)
のひびき、物売りの呼び声、井戸つるべの音。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
先年柳田國男君は、川村杳樹の名を以てその巫女考を郷土研究の誌上に連載せられ、その第十一「
筬
(
おさ
)
を持てる女」(一巻十一号大正三年一月)の題下に
くぐつ名義考:古代社会組織の研究
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
雪を
欺
(
あざ
)
むく白い顔は前を
見詰
(
みつめ
)
たまま、
清
(
すず
)
しい眼さえも黒く動かさない、ただ、
筬
(
おさ
)
ばかりが
紺飛白
(
こんがすり
)
木綿の上を
箭
(
や
)
の
如
(
よう
)
に、シュッシュッと巧みに
飛交
(
とびこ
)
うている。
菜の花物語
(新字新仮名)
/
児玉花外
(著)
▼ もっと見る
筬
(
おさ
)
を流れるように、手もとにくり寄せられる糸が、動かなくなった。引いても
扱
(
こ
)
いても通らぬ。筬の歯が幾枚も
毀
(
こぼ
)
れて、糸筋の上にかかって居るのが見える。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
裏庭から
母屋
(
もや
)
の方へ引き返して行くと、店座敷のわきの板の間から、
機
(
はた
)
を織る
筬
(
おさ
)
の音が聞こえて来ている。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
あの、母狐が秋の夕ぐれに
障子
(
しょうじ
)
の中で
機
(
はた
)
を織っている、とんからり、とんからりと云う
筬
(
おさ
)
の音。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかし、いまはもうこの里も、この宿屋も、こんなにすっかり荒れてしまっている。夜になったって、
筬
(
おさ
)
を打つ音で旅びとの心を慰めてくれるような若い娘などひとりもいまい。
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
艫
(
とも
)
を擦り、
舷
(
ふなべり
)
を並べる、その数は幾百艘。
檣
(
ほばしら
)
は押並び押重なって遠くから見ると林のよう。出る船、入る船、積荷、荷揚げ。沖仲仕が
渡
(
わたり
)
板を渡って
筬
(
おさ
)
のように船と陸とを
往来
(
ゆきき
)
する。
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
車が進むに従って、ユラユラ揺れて陽を反射し、宙に浮かんだ王冠である、明るい林、
虎斑
(
とらふ
)
を置くは、葉漏れ木漏れの朝陽である。そこを縦横に飛ぶ小鳥!
筬
(
おさ
)
が
飛白
(
かすり
)
を織るようだ。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
筬
(
おさ
)
をしめる腕は、自分のか他人のかわからぬくらいにつかれ果てることもあった。
ネギ一束
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
北埼玉
(
きたさいたま
)
の
多門寺
(
たもんじ
)
に近い方角である。この辺、桑の木ばかりだった。その広い桑園のなかに、いつも、
筬
(
おさ
)
の音をのどかにさせている一軒の
機屋
(
はたや
)
がある。
篝火の女
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その口を
慌
(
あわただ
)
しく動かして、
咽喉首
(
のどくび
)
が
筬
(
おさ
)
のように上下するところを見れば、これは何か言わんとして言えないのでした。訴えんとして訴えられないものでありました。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
青山の家の表玄関に近いところでは
筬
(
おさ
)
の音もしない。弟宗太のためにお粂が織りかけていた帯は仕上げに近かったが、
機
(
はた
)
の道具だけが板敷きのところに休ませてある。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
此女らの動かして見せる
筬
(
おさ
)
や
梭
(
ひ
)
の扱い方を、姫はすぐに会得した。機に上って日ねもす、時には
終夜
(
よもすがら
)
織って見るけれど、蓮の糸は、すぐに
円
(
つぶ
)
になったり、
断
(
き
)
れたりした。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
時には『古今集』の序を
諳誦
(
あんしょう
)
させたり、『源氏物語』を読ませたりして、
筬
(
おさ
)
を持つことや
庖丁
(
ほうちょう
)
を持つことを教えるお民とは別の意味で孫娘を導いて来たのもまたおまんだ。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
わけて、
常人
(
つねびと
)
の印象となるであろう点は、笛の孔に無心な指の律動を
筬
(
おさ
)
のように弾ませていらっしゃるそのお手のなんとも大きなことだった。貴人にして力士のようなお手である。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
崖の下の海の深淵や、大河・谿谷の
澱
(
よどみ
)
のあたり、また多くは滝壺の辺などに、
筬
(
おさ
)
の音が聞える。水の底に機を織っている女がいる。若い女とも言うし、処によっては婆さんだとも言う。
水の女
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
お粂は一日
機
(
はた
)
に取りついて、ただただ表情のない器械のような
筬
(
おさ
)
の音を響かせていたが、弟宗太のためにと
丹精
(
たんせい
)
した帯地をその夕方までに織り終わった。そこへお民が見に来た。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
沢庵
(
たくあん
)
は、迷子を捜すように、お通の名を呼びながら、境内を歩いていたが、
機舎
(
はたや
)
の中には、
筬
(
おさ
)
の音もしないし、戸も閉まっているので、何度もその前を通りながら、開けてみなかった。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しんしんと夜が
更
(
ふ
)
けて、涙もわすれ、愚痴もわすれ、心に念仏を置いて、一念に
筬
(
おさ
)
をうごかしていると、その筬の音は、いつか自分のかなしみを慰める音楽のように、一つの諧調を持って
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その機を、その
筬
(
おさ
)
を、今も十年一日のごとく動かしている者は誰だろうか。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
筬
(
おさ
)
の前へ、腰かけて
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
筬
漢検1級
部首:⽵
12画
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筬石
筬胼胝
長筬