はづれ)” の例文
丁度私の田舍は高い山のはづれで、一段づゝ石垣を築いて、その上に村落を造つたやうな位置にあります。私の家はその中央なかほどにありました。
道の左には、半間ばかりの熊笹が繁つてゐて、そのはづれからは十丈に近い断崖が、海へ急な角度を成してゐた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
口がおのづからポカンと開いたも心付かず、臆病らしい眼を怯々然きよろきよろと両側の家に配つて、到頭、村もはづれ近くなつたあたりで、三国屋さんごくやといふ木賃宿の招牌かんばんを見付けた時は、かれには
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
幼児をさなごだまつて、あたしをつめてくれた。この森蔭もりかげはづれまであたしは一緒いつしよつてやつた。此児このこふるへもしずにあるいてく。つひにそのあかかみが、とほひかりえるまで見送みおくつた。
越後は妻有つまり上田の二しやうをながれて魚野川うをのかは急流きふりうをなし、魚沼郡うをぬまこほり藪上やぶかみの庄川口えきはづれににいたりて信濃をながるゝ川と合して、古志郡こしこほり蒲原かんばら郡の中央ちゆうあうをながれて海に入る。信濃の流はにごり越後は清し。
殊に、美奈子達の占めた一室は、ホテルの建物の右の翼のはづれにあつた。開け放たれた窓には、早川の対岸明神岳明星岳の翠微が、手に取るごとく迫つてゐた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
廊下のはづれに消えたとき、ドアの所に立つて見送つてゐた美奈子は、自分の部屋へ駈け込むと、床に崩れるやうに、蹲まつて、安楽椅子の蒲団に顔を埋めたまゝ、暫らくは顔を上げなかつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)